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好文木(校長ブログ)

『かぼちゃと風車とフクロウ』

 『かぼちゃと風車とフクロウ』、これはウクライナの南東部、ドニプロペトロウシク州にある人口約1万人の静かな町、アポストロヴェの民話集です。作者は戦争を逃れいま日本で暮らしています。この町で生涯を過ごした曾祖母から土地に伝わる様々な物語を聞かせてもらい、心に残った声や情景そして余韻を書き留めたものだそうです。ウクライナ語と日本語が併記されています。ちょっと怖い、そして不思議なお話です。「かぼちゃと一本の針」では敵のモスクワ兵たちが村に来るのですが、ウクライナの民話では敵としてのロシア兵をモスクワ兵と呼ぶそうです。長年にわたるロシアとウクライナの関係を物語っています。曾祖母から物語を聴いていた40年前とはアポストロヴェは戦争によって大きく姿を変え、町は破壊され人々は故郷を離れ、当たり前だった平和な風景も失われています。この物語を残し伝えたいという作者の気持ちが痛いほどわかります。

 この表紙の絵、そして中の挿絵を描いたのが、本校のデザイン美術コースで学んでいるウクライナ出身のマリヤ・デレビヤンコさんです。彼女は中学2年生の時に日本に避難してきました。公立中学校で学んだあと、本校に入学してきました。日本語をよく学び、日常会話はほとんど支障がありません。ウクライナではアーチェリーをやっていたので日本では弓道をやってみたいと弓道部に入っています。今年の第75回大阪私学美術展では版画部門で優秀賞を獲得しました。

 彼女はキーウ近郊の街で育ち6歳から美術教室に通い、動物や街の景色を毎日のように描いていたそうです。本校入学を決めたのもデザイン美術コースがあったからです。私学美術展の優秀賞版画も全体を緑で描いたジャングルから出てきた虎です。タイトルは「人生の最後の一瞬」です。父はキーウ近郊の自宅に残り兄は戦場にいます。母と小さな妹とともに日本で暮らしています。休みの日にはウクライナを知ってもらう活動に携わっており、その活躍は新聞やテレビでも取り上げられました。

 本校が学校指定のサングラスを導入した理由の一つは彼女が真っ黒なサングラスをかけて登校してきたことです。日本の太陽はウクライナより強く眩しすぎます。今は指定のサングラスをかけて気兼ねなく登校できます。私もかけているので安心です。私は朝、玄関で挨拶を交わしたり、時々近況を訊いたりしています。少なくとも他のどの生徒も経験していない戦争という辛い環境下にありながら、成績も優秀ですし、いつも笑顔を絶やさぬ優しさと強さを持ち合わせています。張本勲さんでなくとも「あっぱれ」を上げるでしょう。美大進学を希望しています。他の生徒同様にしっかりサポートしていこうと思っています。