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好文木(校長ブログ)

暴動に見る格差拡大

 各種メディアによれば、フランスの教育環境改善を求める高校生のデモは生活費高騰に抗議するデモと相まって規模が拡大し55万人に達し、デモ隊と警察隊が衝突して多数の負傷者が出て、約1200人が拘束されたと伝えています。リモージュ市庁舎は放火により全焼し、商店の襲撃や略奪なども起きて静まる気配がありません。さながらフランス革命のようだと評するコメンテーターもいます。抗議行動としてのデモ自体は民主主義における意思表示として是認されますが、それに乗じて放火、略奪を起こすというのは犯罪行為です。

 アメリカでもしばしば暴動が起き略奪が起きます。日本ではそのようなことがないのは、日本人は民度が高いからだという人もいますが、日本でも江戸時代には天災や飢饉時には打ちこわしが行われました。また火事場泥棒という言葉があるように、災害時の混乱に乗じて盗みをすることもありました。民度は生活水準や教育水準、文化水準などを指します。「衣食足りて礼節を知る」と言います。日本は戦後の高度経済成長を経て一億総中流と言われるほど豊かで貧富の格差がない社会を実現できたことで一定の民度を保ちえたのではないでしょうか。暴動や略奪が起きるのは、貧富の格差が大き過ぎる結果だと思います。

 その日本も一億総中流時代が過ぎ去り格差時代に入ってきました。まだまだ欧米の格差に比べるとその度合いは小さいと思います。しかし、社会から見捨てられたと思う人が増えてくると日本も欧米化する危険性がないとは言えません。政府は巨額の資金を17分野に投入し経済成長を実現し賃金アップを目指そうとしていますが、分野が多すぎて総花的だという批判もあります。中流層が上と下に二極化しないように下を引き上げ、上にはちょっと我慢してもらう調整も必要ではないかと思います。

 フランスの経済学者トマ・ピケティ氏は、2015年にベストセラーとなった『21世紀の資本』において、資本収益率(r)>経済成長率(g)となると、富が資本家に集中し、格差が拡大するので、累進課税の富裕税を世界的に導入すべきとの提案をしました。株や債券あるいは不動産を持っている人の配当、利子、賃料収入の利率が賃金上昇率を上回ると、資産格差が生まれます。働いて賃金収入を得るより、資産を働かせたほうが有利になります。それなりに賃金も上がり、余裕資金の運用で各々資産が積みあがってゆくなら中流階級が増えるのですが、アメリカに顕著なように上位1%が全金融資産の40%を持っているような状態は格差が大きすぎます。

 マルクス(1818-1883)は資本主義が発達、高度化すると資本に利潤が蓄積される一方で労働者の賃金は上がらず労働環境、生活水準が悪化するという窮乏化法則を唱えましたが、その後の資本主義の発達では労働者の生活水準は向上してきたため、その理論的破綻を指摘されてきました。しかし、産業資本主義から金融資本主義の時代となり格差拡大が進みました。さらにAIの驚異的な進歩を観るとき、AIを支配する者とAIに支配される者の二極化が進み格差はますます大きくなるのではないかと危惧されます。21世紀になり窮乏化法則が現実味を帯びてきます。アメリカでも若者の中で社会民主義的考えが増えてきたといわれますが、わかる気がします。