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好文木(校長ブログ)

名優インタビューから

 「戦争は絶対にしてはいけない」、これは今年10月に相次いで亡くなった福田康夫元首相(享年90歳)とマンガ家のちばてつやさん(享年87歳)の生前のインタビューで語られた言葉です。そして昨年11月に亡くなった俳優の仲代達矢さん(享年92歳)もまた同様の思いを述べていました。

 先日、書店で『人間、生きる死ぬです。~仲代達矢最後のインタビュー』という本を見つけ思わず買い求めました。仲代さんは私の好きな俳優の一人だったからです。

 仲代さんは戦争の不条理や悲惨さを描いた五味川純平の小説を映画化した「人間の條件」(1959年)が出世作となりその後、黒澤明監督「影武者」や「乱」などの映画、シェーイクスピアの「マクベス」や「リチャード三世」の舞台、「新・平家物語」、「砂の器」、「清左衛門残日録」などのテレビドラマで活躍し、様々な役を演じました。私が最初に観たのは山崎豊子原作の「華麗なる一族」(1974年 映画)、そして最後は藤沢周平原作の「帰郷」(2020年 テレビドラマ)でした。

 この本の中でインタビューに答えた仲代さんは、俳優になる条件として「一に声」、「二に振り」、「三に姿」を挙げています。低音の渋い声、長身で凛とした動作、彫の深い端正な顔、仲代さんは見事に名優の条件を兼ね備えていました。

 仲代さんは妻の宮崎恭子さんと共に私塾「無名塾」をつくり後進の育成にあたりました。役所広司さんや若村麻由美さんらが無名塾出身者です。昨年行われた石川県七尾市の能登演劇堂での能登半島地震復興公演「肝っ玉お母と子供たち」での主演が最後の舞台となりました。この芝居は30年戦争のドイツとポーランドが舞台で、兵隊相手に商売をして旅する母親が戦争で3人の子供を次々に亡くしていきます。最後に銃殺された娘の屍を乗り越えてまた商売のために兵隊についていきます。戦争によって苦しめられる貧しい人々のそれでも戦争を利用して生きてゆかねばならない悲しい運命を演じた舞台でした。「役者としての、戦争反対っていうのを、死ぬまで続けたいと思っております」と答え、92歳で20回もの公演を終え、その4か月後に亡くなりました。まさに言葉通りの人生でした。私は仲代さんの映画やドラマはいくつも観ましたが、舞台も見ておきたかったなと思いました。

 仲代さんはインタビューの中で、戦争中に空襲を受けたとき、一人で歩いている小さな女の子をかばおうとその子の手を握って逃げようとひっぱった時、その子に爆弾が直撃し、残された手を持ったまま、その手を恐怖のあまり投げ捨てたという経験を語っています。仲代さん12歳のときです。「どうしてその手を投げ出しちゃったかという思いが尾を引いていると思う。だから自分は戦争こそ行ってはいないが“凄まじい戦争体験者”です」と語気を強めたインタビューは胸に刺さりました。