2019.06.24
当たり前を見直す

 先日の職員会議で『学校の「当たり前」をやめた。』(千代田区立麹町中学校長 工藤勇一著 時事通信出版局)を紹介し、一読を勧めました。工藤校長は目的と手段の取り違えによる形骸化したものを大胆に変えておられます。例えば、ただこなすだけの宿題と成績をある時点で確定させるだけの定期考査の廃止、固定担任制の廃止、目的のない遠足の廃止、それに代わる単元ごとの小テストと実力テストの実施、チーム医療型の学年経営の導入、旅行会社とのタイアップによる企画型の取材旅行の実施、AIを活用した個別授業など,参考とすべきことが沢山あります。
 また、工藤校長は、学校は子供の自立を育成する場であり、トラブルをどう学びに変えるか、対立をどう解決していくかが大事だと言っておられます。失敗や挫折を経験しそこから学び次に生かす力「挫折力」こそ不確実性の時代を生き抜くために必要だという私の考えに相通じるところがあります。また生徒指導の考え方についても一致点が多く見られます。
 工藤校長は民間人校長とよく間違われるそうですが、根っからの教員出身です。それだけに現場を熟知されており説得力があります。私とは異なるプロの教育者の経験談を読みながら私の日頃の考え方への理解をさらに深めていただきたいと思い、本校の先生たちにこの本を紹介した次第です。
 少子化が進む中、私学はどこも生徒確保に躍起になっています。施設が充実している私学を見て、私学はお金があると思っておられる人が多いようですが、これは必ずしも正解とは言えません。高校生一人を教育するには年間約100万円かかります。公立はこのお金はすべて税金で賄われます。私学は保護者から頂戴する授業料と経常費補助金(税金)ですが、経常費補助金は生徒数に応じて支給されますので、生徒数の多寡により財政状況は変わってきます。財政が安定しないと教育の質も担保できません。渋沢栄一翁の言う「右手に論語、左手に算盤」の経営が必要となります。
 「丁寧な指導」や「面倒見の良さ」も私学の特徴の一つに挙げられます。これは生徒の自立を育成するための「論語」に当たる部分なのですが、生徒確保を重視するあまりに「算盤」に軸足が振れ、生徒を「お客様扱い」してしまうと、勘違いを起こさせ生徒や保護者の「消費者感覚」を増大させることになります。
 これでは教育が機能しなくなります。トラブルがあったり対立が起きたり、あるいは多少の不自由があるのが世の中で、それを自分の頭で考えて乗り越えていく力をつけるサポート役が学校であり教師なのですから、トラブルや対立・不自由そのもの自体の存在を悪いことだと考えてしまうと教育にはなりません。工藤校長は「保護者が「消費者」、学校が「サービス事業者」と化している状況は、児童・生徒に自律する機会を持たせないまま大人にしてしまうことにつながり、考え直さなければならない。教育の本質を取り戻さねばならない」と述べておられますが、まったく同感であります。

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