好文木(校長ブログ)
2022.09.12
高校での金融教育

 新学習指導要領により2022年度から高校での金融教育が推進されます。理由は成年年齢の18歳への引き下げによりクレジットカードや各種契約が保護者の同意なく行えるようになり金融トラブルに巻き込まれるリスクが高まることそして低金利が続く中での資産形成の重要性を教えるということです。
 実は私は特進コース設立時に1年生の授業で、総合的学習の時間を使って、週一回の「パーソナルファイナンス講座」を実施していました。その後「やさしい経済学」と講座名を変更して10期生までやりました。アメリカの高校生が学ぶ内容を紹介した本を参考に、私の総合商社や中小企業経営での経験に基づき、自分でパワーポイントを作り、株式や債券、金利や為替について出来るだけわかりやすく解説しました。この授業を始めたのは、社会の仕組みを知り不確実性の時代を生き抜く知恵を身に付けることの大切さを理解してほしいとの思いからでした。私は15年前に金融教育を一歩先んじてやっていたわけです。
 私の授業を聞いて経済に興味を持ち経済学部に進んだ生徒もいましたので、それなりの効果はあったと思っています。特進の生徒との距離も狭まり、その後、様々な相談を受けるようにもなりました。しかし、いつまでも担任の時間を取っているのは良くないとのことから、この時間を担任に返すことになり私の講座は終わりました。
 この校長特別講座では、先ず経済の意味、経済学の思想の変遷から始め、何故それを学ぶ必要があるのかを説明しました。円高・円安を学ぶ項では、ビッグマック指数やサザビーズのオークションで高額落札されたピカソやムンクの絵画のドル価格と円価格の比較を題材にしました。ガルブレイス教授の『バブルの物語』から500年間のバブルの歴史を振り返り、2008年のサブプライムローンに発した世界金融危機を解説し、ヘッジファンドの雄、ジョージ・ソロスの思想から、哲学と歴史を学ぶ意義を伝えました。日経新聞やビジネス雑誌からタイムリーなテーマを探し、現実の社会での出来事と関連付けるよう工夫しました。自分でも新たな発見があり勉強になりました。
 こういった授業は、教える側がたくさんの引き出しを持っていることが必要で、それはまた経験に裏付けられるものでもあります。金融庁がテキストを用意しているとはいえ、社会科ではなく家庭科で株や債券、投資信託など資産運用を教えるというのはかなり難しいのではないかと思います。
 「総合的な探究の時間」についても教科を超えた幅広い探究は教員だけでは難しいのが現状です。文科省は、暗記だけではだめで思考力を養うことが大事だということから、次々と意欲的な取り組みを打ち出すものの、それをすべて学校の教員に課すというのは無理があります。その結果、名ばかりで実の伴わない取り組みになっている場合が多いと思います。

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