好文木(校長ブログ)
2023.07.28
最近の事件から

 中古車販売大手による保険金不正請求事件は、全国各地の支店前の街路樹を枯らしていた疑惑が浮上し、各自治体が土壌調査を行う事態に至っています。本校の教員も「そういえば、この会社の支店前だけ街路樹がきれいになくなっていると思っていたんです」と話しています。
 一代で財を成したワンマン経営の企業風土のなせる業と言えばそれまでですが、ノルマを達成するために顧客の車の傷を増やしたり、怒られないために街路樹に除草剤を撒いたりするところまで追い詰められた従業員の気持ちはいかばかりであったかとため息が出ます。まさに「一将功成りて万骨枯る」の感を強くします。
 この会社の場合、上司の言うことに反論は許されず、言われたとおりにやればよいという考え方で運営を行っていたようで、従業員から考える力と意欲を奪っていたのだと思います。保険金不正請求や顧客の車に故意に傷をつける行為、従業員に対するパワハラ等は許されるものではありませんが、一番酷いのは、人間から考える意欲を奪ったことだと思います。人間は大自然の中では極めてか弱い生き物ですが、唯一、考えることができる偉大な生き物でもあります。その偉大さを奪い取る行為は人を人として扱わない行為であり、そのような組織に社会に存在する意義はないと言えます。
 従前とは異なる解釈で正統派の歴史好きからは批判的にみられている今年の大河ドラマ「どうする家康」。信長は自分以外は誰も信じぬ強い独裁的君主、逆に家康は家臣団に支えられる弱い君主として描かれています。(本当の家康はもっと深謀遠慮を巡らす君主だったと思いますが)。家康の家臣は殿様が頼りないので、自分たちでどうしたらよいかをあれこれ考えます。歴史の示すところ、人を活かす点では家康のほうに軍配が上がります。
 今回のケースのみならず、様々な経営者の栄枯盛衰を見ると、カリスマ的独裁者の組織は長続きはしないことがわかります。またその組織の従業員は内に不平不満を抱え込んでいます。ジェームズ・コリンズは『ビジョナリー カンパニー』において、「カリスマ的指導者は必要ない」、「時を告げる預言者になるな。時計をつくる設計者になれ」と述べています。自分がいなければだめになるというような組織は永続性がないということです。

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