
スイスが国民投票で、より厳格な中立原則を憲法に明記すべしという保守派の動議を圧倒的多数の反対(7:3)で否決しました。
スイスは「永世中立国」として有名ですが、これはナポレオン戦争後の1815年のウィーン会議において国際的に承認されたものです。その趣旨は、他国との戦争に参加しないこと、自国防衛のために軍隊を保持すること、他国に対して軍事的便宜を提供しないこと等で、その後、国連安全保障理事会の承認のない国際制裁には参加しないことも付け加えられました。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻後、欧州連合の対ロシア制裁に加わり、北大西洋条約機構との協力強化に舵を切ってきました。今回の国民投票では、原理原則に戻すべきとの保守派の考えが支持されないという結果に終わりました。永世中立の内容も世界情勢によって変わりつつあります。ヨーロッパの中心に位置し、フランス、ドイツ、イタリア、オーストリアに囲まれているスイスの動向は国際情勢の不安定化を図る試金石ともいえると思います。
私は1957年生まれですから、日本が戦後復興から本格的な高度経済成長へ向かう時期でした。1億総中流時代に育ちました。大学を卒業し商社勤務の頃は日本経済は絶好調でJapan as No.1の時代でした。その後、バブル時代も経験し、バブル崩壊から失われた30年を経て二極化が進む現在に至っています。まさに、日本経済の上り坂から絶頂期、そして下り坂をすべて見るという面白い時代を生きてきました。
世界情勢も、米ソ対立から米国一極集中を経て米露中の3つの大国の力による専制政治へと変化しています。トランプ政権になって、アメリカの説く民主主義はアメリカの利益に合致するものであることがより明確になってきました。経済が行き詰まると、敵を作りたがります。外国人排斥や威勢の良い極端な主張が増え、ポピュリズム政党の台頭を見るに至っています。これは歴史的法則と言ってもよいと思います。
日本もまた憲法9条を世界の情勢に合わせて、解釈を変更してきました。1950年の警察予備隊創設時の「自衛のための最小限の実力は武力に当たらない」という考えから、1990年のPKO参加、2015年の安保法制による限定的集団的自衛権の容認へと段階的に解釈を拡大してきました。
不確実性の高い混迷の時代に突入してきました。これからの若い人たちにとって大切なことは「歴史を学び、歴史に学ぶ」ことと「哲学を持つ」ことだと思います。ハンガリー出身の投資家であり慈善家でもあるジョージ・ソロス氏は、トランプ氏は目の敵にしているようですが、「哲学と歴史を学び、権威を盲信せず、権威の元となっている学問を学び、自分なりの理論構築に悪戦苦闘せよ」と説いています。そして「ユーモアを持とう」と。







