好文木(校長ブログ)
2022.04.20
今こそ歴史探究の時

 晴天が続いており、校庭の芝桜が満開です。昼休み、芝生のグラウンドでお弁当を食べる生徒が多くなっています。先週から、広報担当者とともに中学校へのご挨拶に回っています。そろそろ好文木を書かねばと思っておりましたところ、大変懇意にしていただいている中学校の校長先生から、「始業式の講話以降、好文木が更新されていませんが、校長先生はお元気ですか」との問い合わせが、広報担当にあったと聞きました。
 この校長先生のところには先週早々にご挨拶に参りましたが、「やりたいことがいっぱいあって、毎日が楽しいです」とおっしゃっておられ、バイタリティ溢れる素晴らしい先生で、元気を頂いて帰ってまいりました。好文木をご愛読いただいており、いつも感謝を申し上げております。広報担当者が「先生の学校に伺って以降も、毎日、朝から夕方まで中学校訪問をしておられるので、好文木を書く時間がないんです」と返事をしたとのこと。そこで、久しぶりに筆を執ってみました。
 「民主主義とは最悪の政治形態だと言える。これまで試みられた民主主義以外のすべての政治形態を除けば」とは、イギリスの宰相、ウインストン・チャーチル卿の言葉ですが、
ロシアのウクライナ侵攻に、改めてこの言葉の意味するところを考えされられています。
 民主主義は多数決であり、多数が必ずしも正しいとは限らず、ポピュリストに世論が牛耳られると、衆愚政治から専制政治へと移行してしまうことは歴史が示しています。経済学は合理的経済人を想定し経済法則を導き出しました。民主主義もまた、情報が恣意的に操作されず、平等で自由なアクセスができ、国民がみな合理的な判断をするという前提で、初めて機能するものだと思いますが、そこは人間世界ですからなかなか完璧にはいきません。
 日常生活において犯罪である暴力やいじめが、ウクライナでは堂々と行われています。「武力こそ正義」がまかり通るのが戦争です。国連の非難決議は141カ国の賛成多数で可決されたものの、反対が5カ国、棄権が35カ国ありました。英エコノミスト誌の調査部門によれば、人口分布で見ると、ロシアを非難し制裁にも加わっている国の人口は世界の3分の1に過ぎないとのこと。政治経済的にロシアとのつながりが強い国が多いということです。残虐行為を止めることが出来ません。民主主義が専制主義に負けているのが現状です。
 クラスでいじめられている生徒をかばっているのが3分の1だけで、あとは様子見しているようなものです。「いじめられる方にもそれだけの理由がある」とか「いじめている子とは仲良で、いつも面倒を見てもらっているから、いじめを止められない」などと言ったら、どうでしょうか。しかし、それがまかり通るのが国際政治の不条理です。
 ロシアの文豪トルストイは『戦争と平和』の中で、次のように述べています。「ナポレオンはいつにもまして、今、1812年には、諸国民の血を流すか流さないかは、自分次第で決まるように思えていたにもかかわらず、必然的な法則に今ほど従属していることはいまだかつてなかった。その法則によって、全体の営みのため、歴史のために成就すべきことを、彼はいや応なしにさせられていたのだ」(岩波新書、藤沼貴訳)
プーチンは2022年、自己の信念に基づき、ウクライナ国民を生かすも殺すも決められると考えているのですが、実はこれも様々な事象の積み重ねが、歴史のためにプーチンにこのような行動をなさしめていると考えられるのでしょうか。そうであるならば、必然的な法則とは何でしょうか。また、歴史は何を成就しようとしているのでしょうか。フランシス・フクシマ氏の民主主義と自由主義の勝利での『歴史の終わり』が不充分であり、今、揺り戻しが起こっており、さらなる英知を絞ることを人類に求めているということなのでしょうか。今こそ歴史探究の時。

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