天王寺の大阪市立美術館で23日から28日まで開催中の第68回大阪私学美術展において、本校生徒出品作品が5つの特別賞のうち大阪府知事賞(1位)、大阪市長賞(2位)そして美術館長賞(4位)の3つの賞を受賞し、三年連続での学校団体優秀賞も頂戴することとなりました。作品を出品しているのはデザイン美術イラストコースとマンガアニメーションコースの生徒たちです。本校のメディア芸術群の質の高さを証明する快挙であり、生徒並びに担当の先生の日頃の精進の賜物と思います。9月末完成に向けて建設が進んでいる新校舎A3(エーキューブ)のメディア芸術棟での活躍がますます期待されるところです。
メディア芸術群では3年生は卒業作品の制作にも精魂を傾けます。個々人が根気よく作品を仕上げるという時間のかかる地味な作業です。思い通りに描けない、作れない場合には投げ出したくなることもあるでしょうが、自分の思いや願い希望などを作品に投影してゆける個人にとっての意味ある時間を持てる活動です。
昨日、以前読んだ『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の著者山口周氏の「経営におけるアートとサイエンスのリバランス」と題した講演を聴く機会を得ました。AIが進歩する現代、サイエンスの重要性は言うまでもありませんが、それ一辺倒では正解のコモディティ化は避けがたく、直感や倫理観、感性といったアートの出番が来ているというお話は誠に納得性がありました。
山口氏曰く、役に立つか立たないか、個人にとって意味があるか意味がないかで4分類ができます。役に立つが意味がないに分類されるのはコモディティ化した商品、即ちありふれた商品です。この分野は費用対効果が重視され価格競争で消耗します。役に立つし意味があるのはポルシェなどの高級車やスイスの機械式高級腕時計など。そして文学やアートは、実利的には役に立たないが個人にとっては意味が重視される分野に位置づけられます。
山口氏は現代という社会の特徴として、過剰なモノと希少なモノを次のように分類しています。過剰なモノは「正解」、「モノ」、「利便性」、「データー」、「説得」、「サイエンス」。希少なモノは「問題」、「意味」、「ロマン」、「ストーリー」、「共感」、「アート」。
その意味するところは、「正解を求めることに汲々とするのではなく問題にこそ目を向け自ら考え生きる意味を問う。そして自らの人生にロマンを求めストーリー性を付与し、他者への共感をベースに感性を磨く」と解釈することができるのではないでしょうか。
今回出品された生徒たちの作品それぞれにそれぞれの人生の喜びと苦しみが凝縮されていると推察いたします。本人の才能に指導教員の共感と適切なアドバイスが加わり素晴らしい結果を生むことができたのだろうと思います。