
アメリカはソ連との冷戦に勝利し、唯一の超大国となり自由民主主義の伝道師として、また世界の警察官としての役割を担ってきました。しかし、新自由主義とグローバリズムの進展は貧富の格差を拡大し、新たな階級社会を生みました。取り残された人々の心を掴み「アメリカファースト」のスローガンの下、トランプ大統領は保護主義、排外主義に舵を切っています。今回のトランプ関税については国内産業保護が目的ですが、一旦グローバル化した経済は容易に元には戻りません。それぞれの国・地域で得意分野に特化した生産が行われそれを世界全体で享受するという自由貿易体制を崩すとなると、アメリカも含め各国が行き詰ります。
グローバリズムに対する揺り戻しはヨーロッパでも起きています。そして日本も例外ではありません。外国人規制が参院選の争点に急浮上しています。歴史を紐解くと、国の経済状況が悪化し国民の不平不満が高まってくると、捌け口を求めてターゲットを探します。それは他国への侵略であったり移民排斥であったりします。第二次大戦下のナチスによるホロコーストはその最悪なものです。かつて虐げられた者がやがて力を得て今度は他者を虐げる側に回る負のスパイラルも見られます。
現代はSNSの威力が大きく、真偽不明の情報が拡散されポピュリズムに容易に道を開きます。そして社会が分断され対立が際立ち、寛容さが失われます。バランス感覚を失うと危険な「いつか来た道」を辿るリスクが高まります。
歴史は過去との対話であり現在を俯瞰し未来を予測する鏡となりえます。暗記科目として多くの生徒に捉えられていることを誠に残念に思っています。「歴史を勉強して何の役に立つんですか?」と言う生徒は一定数います。歴史上の事件を過去のものとせず現在の状況と対比しその類似性を探してみてください。大河ドラマ『べらぼう』、コメ不足で田沼政治への風当たりが強くなる中、幕府が直接コメを買い取り仕入れ価格で庶民に売るという話が出てきました。現在の状況に酷似しています。激動する世界情勢は我々の将来の生活に大きく影響を与えます。「歴史を学び、歴史に学ぶ」ことが大切です。