好文木(校長ブログ)
2022.05.27
感性を育む

 先日初めて実施した「コースデー」の振り返り授業がデザイン美術コースで行われ、その一コマを参観しました。「コースデー」しおりに収められていたモディリアーニの作品「大きな帽子を被ったジャンヌ・エピュテルヌ」を観てどう感じたか。モディリアーニの35歳という短い生涯と彼を追って自殺した恋人ジャンヌという背景を知った上で、それぞれの生徒が感想を述べあいました。
 帽子を被っていることから戸外のカフェで描いたと考える生徒もいれば、帽子は、アルコール中毒の自分からいつかは離れて行ってしまうのではないかという不安な気持ちの象徴と思った生徒もいました。肌の質感が滑らかで暖色を使っていることから、「いとおしさ」や「安心感」が伝わってくる。首のなだらかな曲線から女性らしさを感じる。目の青色はジャンヌと二人の明るい未来を期待しているという見方もあれば、逆に目だけ暖色でないのは前向きな未来が見えない証と考える生徒もいました。また、目の中に瞳を描いていないのは、モディリアーニがジャンヌの心の中を決めてしまいたくなかったからとの意見等々。一枚の絵から実にユニークで想像性に富んだ見方が続出し、生徒たちの豊かな感性に感動しました。
 国語の入試問題で正解とされた解答に対して、作者が「私はそのような思いで書いたんじゃないんだが?」と言ったという話を聞いたことがあります。文章ですら違った意味の取り方が出来るのです。人の感じ方や捉え方が決して一つではなく様々だということを理解し、共感力と想像力を磨き、他者の感じ方にも「なるほど」と思える機会が増えれば増えるほど、人間関係を上手く結ぶことが出来るようになるのではないかと思います。このような意味からも、デザイン美術のこの授業は大変意味のある取り組みだったと思いました。

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