好文木(校長ブログ)
2018.10.10
転機

 経団連が、大手企業の採用面接の解禁日などを定めた指針を2021年度春入社の学生から廃止することを決定しました。経済界が主導するルールがなくなることで、横並びの新卒一括採用を見直す動きが企業に広がるのではないかとの観測が流れています。
 新卒一括採用は世界的にも日本と一部の国が採用しているシステムで、転職も含めた通年採用が主流です。外資系や一部のIT企業などはすでに通年採用に切り替えているので、良い人材を獲得できなくなることを恐れた経団連会員企業が増えたため、今回の決定に至ったようです。
 この動きに対して、大学側からは学生が1~2年生から就職を意識し学業が疎かになるとの懸念の声が出ており、政府は経済界と大学側を交えた新たな就活ルールの議論を始める予定だと報じられています。
 政府は教育改革においてグローバル人材の育成を謳い、欧米流の手法を様々な分野で取り入れようとしています。グローバル人材育成を目的とすることには異論もありますが、日本の大学生が欧米の大学生に比べると勉強の質も量も足りないことは事実です。大学がレジャーランド化し就職予備校化して久しく、リベラルアーツを学び教養を深めたうえで専門的な学問を学ぶ本来の大学の姿に戻ることはグローバル、ローカルの別なく人格を高めるうえで必要だと思います。
 政府は少子高齢化に際し、定常化社会ではなくなお経済成長を求める道を選択しています。小池東京都知事は国際金融都市ロンドンのシティーに倣い東京にも国際金融都市をアピールするメイヤーを設置する構想を発表しました。こうなるとウインブルドン化は必至で、世界中の金融機関が東京という場を借りて熾烈な競争を繰り広げることとなります。
 今後は単純労働のみならず高度な技術やマネジメントの必要な分野においても優秀な外国人が多数流入し、彼らとの競争も激しくなってくると考えられます。就社ではなくまさに就職で、職種での即戦力を求める採用が主流となるでしょう。企業内でのじっくり時間をかけた教育は影を潜め、自己研鑽で道を切り開くことになるでしょう。そしてAIの進歩と相まって二極化はさらに拡大すると思います。
 私はこのような社会が好ましいとは思いません。しかし、日本社会は確実にこの方向に進みだしています。人生100年時代になり、新卒一括採用、年功序列賃金、終身雇用という日本的雇用システムが崩れ競争的システムに代わると、かなり厳しい未来が待っていると予想されます。戦後つくられた高度成長期はいわゆる護送船団方式の社会システムが機能し、よほど大きな失敗をしない限り、程度の差はあれ皆が成長できた時代でした。しかし、そのシステムはバブル崩壊とともに金属疲労を起こし平成の長い停滞期を招きました。そして平成が終わろうとする今、大きな転機を迎えていると感じます。

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