好文木(校長ブログ)
2024.11.30
SNS禁止法

 オーストラリアでは暴力や自殺、いじめの温床となる有害な投稿から子どもを守る目的で、16歳未満の交流サイト(SNS)の利用を禁止する法案が成立しました。政府は「これは世界をリードするSNS禁止法だ」としています。加害者側には罰則はありませんが、対策を講じなかった企業には最大で4950万豪ドル(約50億円)の制裁金が課されます。禁止対象はTikTok、インスタグラム、X等で、メッセージアプリやゲーム、教育関連サービス、ユーチューブは対象外となっています。
 SNSの問題の核心は「匿名性」です。正体を知られないことを良いことに言いたい放題が許されています。そして中傷していた側が風向きが変わることで中傷される側に変わります。 SNSは自動車と同じで「許された危険」に分類してもよいと思います。自動車は一度事故を起こすと大きな被害が発生しますが、利用することから生じる社会的メリットが大きいゆえに存在を許されているのです。SNSもまた今や必要不可欠なツールです。
 1999年飲酒運転のトラックが女児2人を死亡させた東名高速の事故により、危険運転の厳罰を求める被害者・遺族サイドの声に押されて「危険運転致死罪」が2001年に制定されました。SNSにおいても2020年にプロレスラーの木村花さんがSNSの炎上で自死した事件により、罰則強化が叫ばれましたが、開示請求から訴訟に至るまでの時間がかかり過ぎる割には損害賠償金額が少な過ぎ実効性に疑問が残ります。誹謗中傷のハードルをもう少し低くして開示請求を容易にすべきだと思います。表現の自由と誹謗中傷のバランスが前者に偏りすぎているように思えてなりません。罰則も強化すべきです。
 かつて交通安全の標語で「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」というのがありました。歌謡曲のフレーズには「ダイヤル回して手を止めた」というのもありました。IT化の進展により飛躍的に便利になった反面、余裕を失い、衝動的で、殺伐とした人間関係が横行する時代となり、益々コミュニケーション能力が求められるとは皮肉なことです。

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