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好文木(校長ブログ)
2018.05.17
「面倒解消市場」に思う

IMG_0905 「シェアラー」・「ラッシャー」・「ソリスト」、これらは日経ビジネス5月14日号で紹介されている消費の新潮流を担う3パターンです。敢えて日本語に訳せば、「分け合う人」・「急ぐ人」・「1人を好む人」とでもなるのでしょうか。
お洒落はしたいけど、着る服を自分で選ぶのは大変だし、買うと服が増えて困るという人向けに洋服シェアリングサービス。癒しになるけど、飼うと散歩や躾が面倒で、死んだときは悲しいからとペットの貸し出しサービス。ジムには行きたいが、時間はかけたくない人には電気で筋肉を刺激する装置内蔵の特殊スーツを着ての20分間トレーニング。VR(仮想現実)を使った「超時短旅行」。人間関係のしがらみが嫌いで、同僚や友人とは飲みに行きたくはないが、店では誰かと話したい人にはお一人様居酒屋。
これ以外にも様々なサービスが生まれていますが、共通するのは「消費はしたいが面倒は敬遠したい」という姿勢です。モノの所有や人間関係を面倒だと感じる人が増えてきており「面倒解消市場」の成長が期待できるとのこと。その背景には単身世帯の増加とスマホやネットなどの技術の進化があると言います。そして、野村総研の調査によれば、20~30代男性の7割と30~40代女性の6割が「誰かと一緒より、1人で行動することを好む」そうです。
学校においても、人間関係に悩みを持つ生徒は沢山います。それが私への相談の大半を占めています。生まれも育ちも性格も違う人間が一緒に生活するのですから摩擦が起きないほうが不思議です。そして、グループが出来るといつも一緒に行動すべきだという同調圧力がかかるようです。たまにはみんなと一緒に行動したくない時だってあるでしょうが、これを上手く説明し理解してもらうのが大変です。簡単にリセットできない人間関係ほど面倒なものはありません。
にもかかわらず、学校というところは、現実から乖離した理想を求め過ぎるところがあります。その典型が、小学校に入ったとき聴かされた「一年生になったら、ともだち100人できるかな」じゃないでしょうか。これが呪縛となって「友だちが出来ないから自分はダメだ」という自己否定感が生まれ、「みんなと仲良くしないといけない」という強迫観念に苛まれます。
私は「気が合わない人とも仲良くしなさい」とは言いません。「嫌いなものを好きになれと言っても無理やわな。でも、自分がされて嫌なことは相手にもしないように、そして最低限の挨拶はしておきなさいよ」と人付き合いの方法をアドバイスします。
さて、この日経ビジネスの記事は、「面倒解消市場」の拡大は個人の購買意欲の衰退による経済の縮小を招くとともに、シェアリング産業の仕組みを作った人とそこで働く人との間の格差も拡大させる懸念があると警鐘を鳴らしています。
都心での登録会員数を伸ばしているバイクシェアなど技術の進化が快適さと効率化に役立っていることは確かです。しかし、面倒だからこそ面白い、達成感が感じられるあるいはスキルや能力が身に付くということもあります。私は、「面倒解消市場」がもたらす経済的デメリットもさることながら、面倒くさいことを経験することで得られる「学び」や「価値」の喪失を最も懸念するものです。

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