好文木(校長ブログ)
2018.05.15
大人にこそ必要な国語力

IMG_0927 高大接続の教育改革において、論理的思考力や問題解決能力そしてコミュニケーション能力を養うことが大切であることが改めて強調されています。そしてこれら能力を各教科の指導を通じて身に付けさせることが求められています。私自身企業で勤務した経験から仕事においてこれら能力の必要性を痛感しています。
ところが、日頃の先生方の仕事のやり方をみていますと、論理的思考に基づきコミュニケーションを図り問題解決に向かっているとはいえない事象もあります。
例えば、先生の発言で生徒が甚く傷ついたり反感を持ったりすることがあります。私のところに生徒が直接訴えてきたり、手紙を校長ポストに入れたり、あるいはまた、生徒から話を聴いた保護者からお電話を頂きます。教員に事実関係を確認しますと、大抵が言葉足らずで丁寧な説明が出来ていなかったために真意が正しく伝わっていないと分かります。
また、教員から上がってくる生徒報告書には、5W1H(いつ、どこで、だれが、なぜ、なにを、どうした)が不明なものや現状分析と原因の究明が不十分で、改善の方策も示されていないものもあります。私は赤字で丁寧にコメントを書いて差し戻しをします。
その他、ある提案について、校務分掌間の意見交換や調整が必要な場合にも、前例主義に陥ったり感情論に終始したりして生産的な議論とならず、いつまでたっても堂々巡りをしていることがあります。「これでは生徒のためにならないな」と嘆息してしまいます。教育改革の中では、ディスカッションやディベートの必要性も謳われていますが、これが先生方はどうやら不得意のようです。
先生は各教科で問題の解き方を論理的に教えているはずなのです。特に、国語や数学は論理的思考を養う基礎となる教科です。しかしながら、教科として教えることが出来てもその力を自身の仕事で実践に活かしていないのでは、生徒に対しての説得力に欠けます。先生達こそ国語の学び直しが必要なのではないかと思うこと度々でしたが、先日、それにぴったりの良い本に出会いました。
東京大学大学院総合文化研究所教授の矢野茂樹氏が書かれた『大人のための国語ゼミ』です。問題形式で具体例がふんだんに示されており、文章の要約や適切な接続詞の選択を通して論理的思考と伝える力を学び直すことができます。「相手のことを考え、分かってもらえるような言葉に言い換えたり説明を補ったりする力は、国語力である」という一文は、国語を学ぶ意味を的確に示しており、生徒に国語を学ぶ意義を伝えるためにも役に立ちます。本物の国語力とは「技術」ではなく「想い」だと思います。先生方に是非読んでいただきたい一冊です。

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