好文木(校長ブログ)
2023.10.26
あるスーパーの試みに学ぶ

 首都圏にスーパーマーケット135店舗を展開する株式会社ベルクが店頭に掲げたポスターが話題になっているそうです。「従業員の身嗜み 多様化、始まる。頭髪・ネイル等の基準を大幅に緩和しています。お客様のご理解ご協力をよろしくお願いいたします」
 このスーパーでは9月1から、勤務中の髪色、髪型が自由になり、ヘアアクセサリーとピアスもOK。付け爪は禁止ですがネイルカラーも認められました。「常に衛生的かつ清潔であり、お客様に不快感や恐怖感を与えないこと。作業性と安全性を考慮し、業務に支障を与えないこと」が前提条件です。
 変更直後は、来店客から「金髪の店員さんがいる!」と驚かれ、スーパーにはふさわしくないという批判も寄せられたそうですが、1か月が経ち、変化が現れたようです。「金髪でもテキパキ働く男の子がいる」とか「髪色自由だけどちゃんとしている」などのSNSへの投稿が見受けられるようになったといいます。
 従業員からは圧倒的に歓迎する声が多く、人事担当者の目にも、従業員に笑顔が増え、より良い接客への意識が高まり、よい結果を生んでいると映っています。アルバイトの募集にも好影響が出て、応募件数が増加。また退職を撤回した学生アルバイトもいたそうです。
 髪型や服装など見た目に対する固定観念は強く、「こうあるべきだ」という考え方は何もスーパー業界に限ったことではありませんが、外国人労働者も増加しています。見た目ではなく接客態度で判断することが顧客側にも求められるようになったと思います。
 このニュース記事を読んで頭に浮かんだのは、本校において現在進行中の校則の見直しです。生徒へのアンケートで最も多かったのが化粧と髪染めの自由化です。女子高生の校則で最も関心が強いのがこの二つだといわれており、その通りの結果が出ています。もちろん学校と企業を同列に扱うことはできませんが、株式会社ベルクさんの対応から学ぶところは大いにあります。無条件の緩和、自由放任ではないということです。顧客への配慮と仕事の効率性等考慮して業務に支障を与えないという大前提があります。
 日本の高校では化粧や髪染めを自由化しているところは数少ないと思います。禁止するのにもっともな理由をつけますが、要は自由化すると歯止めがきかず風紀が乱れ評判が落ちることを学校が懸念するからです。特に私学ではそうです。評判が落ちて生徒が減れば元も子もありません。本校が17年前に取り組んだ改革の一丁目一番地は身だしなみ指導の徹底でした。その当時においては時宜を得た対応でした。評判も急回復しました。しかし、時は流れ学校も変わってきた中で、いつまでもあれもダメこれもダメの窮屈な学校ではいたくありませんし、先生に言われた通りに従うだけの生徒ではなく、自分の頭でしっかり考え、問題解決能力を持った生徒を育てたいと思います。
 大阪の私立の女子高のスカート丈の基準は大体膝頭ぐらいですが、かなり短めの基準を定めている学校があります。みなが短いわけではありませんが、確かに短いスカートの生徒が多いです。また薄っすらとお化粧をしているような生徒もいます。スカートは少し短くとも、薄っすらお化粧をしていても、全体としての身嗜みはきちんとしており清潔感があふれている生徒がほとんどです。また勉強も部活もそれなりにきちんとしている生徒が多いです。以前から本校もかくありたいものだと思っています。件のスーパーで言えば、顧客に不快感を与えず安心感を与え、仕事の成果を上げるということでしょう。
 先日、鞄に着けているキーホルダーの件で生徒指導部長から全校放送にて注意喚起をしました。同じ鞄で見分けがつかないという生徒からの訴えに応じて随分前に鞄にキーホルダーをつけることを許可しました。当初はキーホルダーは小さいものを一つだけと言っていましたが、小さいとはどのサイズか等細かい話になりがちでした。他校生の様子も見ながら、細かい注意はせずに来たのですが、このところ目に余るほどたくさんのキーホルダーをつける生徒が出てきました。限界に来たので指導に入ったところ、一部生徒から文句が出ましたので、生徒指導部長による放送となったのでした。「ちょっと調子に乗ってつけすぎたな。いわれることはもっともだから数を減らそう」と聞き分けの良い生徒ばかりではないのは残念です。限度をわきまえて、センスのある生徒を育てることが必要だと思います。そのためには我々教員の生徒指導のセンスを磨くことが大事です。
 「自由闊達にして愉快なる学園の建設」のめざすところは生徒の自主性を引き出す教育で、校則改定に矮小化すべきものではありません。しかし、校則は生徒にとって最も身近で関心の強いことですから、とりあえずここから手を付けようと考えました。生徒と教員との議論の中で、お互いのセンスを磨くことができれば良いと考えています。

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