2019.05.21
いじめ対応

 「いじめ防止対策推進法」は、大津の中学生のいじめによる自殺を契機に、2013年6月21日、参院本会議にて可決成立し、その秋から施行されました。その時、私は「当たり前のことをわざわざ法律を作り、既存の組織のPDCAを回せばできることを、屋上屋を重ねて特別な組織を作ろうとしているように思います」と2013年7月5日付の好文木に書きました。
 5月19日(日)午後9時からのNHK特集「子どもの声なき声~いじめと探偵」は、報告されただけでも年間41万件のいじめが起こっており、多くの被害者やその親族が学校や教師あるいは教育委員会の対応に不満を持っている実態を浮き彫りにしていました。
 東京世田谷区にある探偵事務所がこの不満の受け皿となり、被害者や保護者からの依頼に基づき、いじめの実態調査を行っています。加害者の筆跡鑑定を行ったり、現地に赴いて関係者から話を聴いたりしています。そして、学校や第三者委員会の対応が不十分である場合には、集めた情報や証拠をネットで流しさらなる証言を得、地元新聞社を集めて会見を行うなど世論の力をバックに第三者委員会の調査の続行を実現しています。当初この調査は有料で行っていたのですが、子どもの苦しみや保護者の悲しみに料金を取ることが憚られ、現在は寄付から費用を捻出しているそうです。
 自殺した中学1年生の事案では、亡くなった後の学校によるいじめ調査で複数のいじめ目撃証言があったにもかかわらず、匿名であったがゆえに、いじめがあったとは認定できず、テニス部の部活でのストレスが原因との報告書になっています。この第三者委員会の結論には憤りさえ感じます。
 別の案件では、校長が被害者から話を聴いたものの、相手方に対して何の対応も講ぜず、本人に寛容を求めたというケースもありました。学校のトップである校長に話したにもかかわらずこの対応では、被害者の落胆いかばかりかと思います。
 この特集で取り上げられた案件の学校関係者には「傾聴と共感」がないなと感じました。被害者に寄り添って話を聴いていますと口では言っているのですが、決められたプロセスを淡々とこなして、聞き取りをしたという証拠を積み上げているだけにしか思えません。
 やはり、当初私が予測したように、法律を作り精緻な対応マニュアルを用意しても、仏作って魂入れずでは意味がないということです。最近の教育行政はこういうことが多いように思います。
 本校でもこの法律に基づき組織を作っています。しかし、その以前から担任や生徒指導部がいじめについてはアンテナを張っていますし、校長室を常にオープンにし、校長ポストも設置しており、いじめに対しては教員総動員体制で臨んでいます。悪い情報はすぐトップの耳に入れるようことあるごとに話をしています。そして、トラブルが起きた場合には、被害生徒、加害生徒双方への聞き取りに迅速さと正確さを求めます。聞き取りが不十分と感じた場合には再度確認を指示し、詳細な実態把握に努めています。
 私は「いじめゼロ」という目標はナンセンスだと思っています。NHK 特集になるような問題が起きるのは、学校としていじめがあってはいけない、だからあったと認めたくないという心理が働くからではないかと思います。
 しかし残念ながら、人というものは集団生活をすると、意見の相違や好き嫌いからトラブルが起き、時にそれがいじめに発展するものです。いじめがいけないことはわかっていてもやってしまうのが人間です。その痛みは自分がやられる側に立って初めてわかります。学校でいくらいじめの研修を行っても、SNSでのいじめやトラブルは起きるという前提で考えなければならないと思います。
 大事なのは、いじめの早期発見と被害者の迅速な救済です。そして加害者への指導教育です。私は常に「傾聴と共感」をもって生徒に接することをやかましく言っておりますが、これは自分がその立場に立ったらどう感じどう思うかを常に想像力をたくましくして感性を磨けということです。
 本校では年2回のいじめアンケートを実施しています。以前、アンケート実施から何日もたっているのになかなか結果報告がこないので催促をしたことがありました。担当者からは、結果を集計するのに時間がかかっているとの話でした。
 私は、各クラスの担任がアンケートを集めた段階で「いじめられている」とか「いじめられているのをみた」というものがあったのかどうかすばやく確認し、直ちに報告するよう指示しました。もし、いじめられている生徒がいたら、アンケートで訴えたにもかかわらず何日も放っておかれることになるからです。
 アンケート調査で集計するのが仕事になると、いじめのあるなしの把握と迅速な対応が阻まれます。まさに担当者のセンスが問われるところです。いかに制度を整備しても、運用する人にセンスがなければ効果は発揮しません。そして、そのセンスは生徒に対する思いやりと愛情のバロメーターだと私は思います。

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