2019.01.31
トラブルの宝庫


 学校は人間関係のトラブルの「宝庫」だと思います。「トラブル」がなぜ「宝庫」なのか訝る方が多いでしょうが、「問題があるということは生きている証拠」だからです。そして、トラブルに対処する中でコミュニケーション能力を高めることができ、人間関係の難しさ、面白さが分かるのです。
 「智に働けば角が立つ、情に掉させば流される、意地を通せば窮屈だ。とかく人の世は住みにくい」(『草枕』夏目漱石)はけだし至言だと思います。すべての問題はまさに人間関係に集約できます。
 校長室をオープンにし、校長ポストを設置しているので、多種多様な生徒の声を聴く機会があります。人が集まれば派閥ができるもので、彼女たちも仲良しグループができます。グループ間のみならず同じグループ内でも意見を異にしたり趣味が変わったりしたときの双方の対応次第でトラブルが起きます。先生と生徒間の意思疎通がうまくゆかないで悩むこともあります。
 多くの人間が絡むと問題が複雑になり、もつれた糸を解くのが難しくなります。人間ですから、一旦もめて相手に対して嫌悪感を抱いてしまうと、理屈では理解できても感情がついてゆかず、容易には元に戻れません。
 「四方の海、みなはらからと思う世に、など波風の立ち騒ぐらむ」(明治天皇御製)の心境となります。しかし、どうしても解決ができず耐えきれず校長室のドアを叩いた彼女たちの気持ちを考えると、悲嘆にくれてばかりはおられません。私は彼女らの主張を傾聴と共感をもって聞くように努力し解決策を模索します。けっして頭から否定したり説教に入ったりはしません。
 実はこう見えて私は結構神経質なので、ストレスフルな状況になると首と頭の付け根がズキズキ痛むので常備しているバファリンを飲みます。「疲れている」、「悩んでいる」そぶりを生徒に見せたのでは、生徒の悩みをしっかりと受けとめねばならない私の役割が果たせません。できるだけ冷静に対応しようと心がけています。
 生徒同士のトラブルで、容易に仲直りができない場合には、深入りをせず互いに少し距離を置くこともやむを得ません。「みんなに好かれて、みんなと友達でいなければならない」という「ともだち百人できるかな」神話から脱却することを勧めます。そして、自分にとっての優先順位を考えること、他人に振り回されないことなどを話します。トラブルを乗り越えた生徒は大なり小なり「挫折力」を身につけます。人間社会は不条理なもので白黒はっきりとつけることはできないということ、人と無益な争いをせずに自分を生かして目標に向かって進むことが大切であるということを学んでほしいと思います。
 一方、教え導く立場にあるわれわれ教師もまた、「挫折力」を身につけねばなりません。生徒との意思疎通がうまくゆかず、時には反感を買ってしまう場合もありますが、めげることなくその原因を真摯に考え、自らに落ち度があれば素直に謝り、傾聴と共感の態度に返ることです。それでも関係修復が難しい場合もあります。思春期の悩み多き少女たち、時にわがままで、時に自己中、そしてひ弱な彼女たちに接するのはなかなか骨の折れる仕事だと思います。しかし、そこで諦めてはいけません。プロフェッショナルとして努力は続けねばなりません。われわれは生徒に努力の大切さを説いているのですから。「人間は死ぬまで努力だよ。始めがあって終わりがないのが努力です」(『仕事と心の流儀』丹羽宇一郎著 講談社現代新書)身をもって示すことこそ最善の教育だと私は思います。

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