好文木(校長ブログ)
2026.10.09
フランス高校生デモに思う

 フランスの高校生が教育環境の改善を求めて大規模な抗議行動を展開し、一部が暴徒化し拘束者も多数出ていると報道されています。教員不足、教室の椅子等基本設備の不足、校舎の老朽化、害虫やネズミが出るなど劣悪な衛生環境等々、学校によって事情が異なるようですが、低所得者層の多い地区で教育環境の悪さが目立つようです。フランスでは教育環境における格差が大きいものの、財政難で教育環境整備のために十分な資金が投入されていません。高校生によるデモは急進左派政党を巻き込みフランス全土に拡大し、2027年度の大統領選の火種になっていると言います。良しにつけ悪しきにつけ、革命の国を感じます。

 先進国では一部を除き教師という仕事に対する魅力が低下しているようです。日本でも同様で教員不足が問題になっています。決して給与が安いとは思いませんが、他の職業に比べるとコストパフォーマンスはいいとは言えません。生徒や保護者対応でのストレスが多く、勤務時間が長い点が避けられる原因です。しかし、教師ならではの面白さもあると思います。それは生徒とのコミュニケーションを通した相互信頼の醸成と互いの成長の実現ではないかと思います。生徒の将来に影響を与えることができます。もっとも悪い影響を与えて反面教師になってはいけませんが、「先生のお陰で」と感謝の言葉をもらえるなら、最大の報酬だと思います。それは一般企業で働いているのに比べると、生き生きと感じられるのではないでしょうか。

 私は本校の校長として教育現場に入って20年になります。すっかり教育現場に馴染んでいますが、子供を教育するというのはなかなか大変だと思います。大人相手だと大抵の事につき一応共通認識があると考えられ、常識が通じます。最近では、大人の間でも世代間格差を感じます。ましてや子供となると推して知るべしです。

 当初は私も私世代の常識で生徒を指導しようと考えていました。ところが、生徒の話を聞く内に、なぜそうすべきなのか合理的に説明できないことがあることに気付きました。しかし、ほとんどの教員は「校則だから」、「決まっているから」、「高校生にふさわしくないから」という理由で返しています。じゃあ、「なぜ校則になったのか」、「なぜ決まったのか」、「どこがなぜふさわしくないのか」まできちんと説明できていませんし、教員自身も深く考えていないことが少なくありません。説明しても、相手が納得していなければ意味がありません。

 私は、社会の現状に照らし、合理的に説明できない決まりごとは変えてきました。学校の常識は社会の非常識という面もあります。多くは「教育的観点から」というのですが、生徒の一生を左右するようなことと、どうでもよいこととは区別せねばなりません。本当に大切なことを飛ばし、どうでもいいことに拘る習性があります。人権や命にかかわること以外は程度の差はあれ、どうでもいいことに入れてもよいと思います。またルールが好きという特徴もあります。これは一律に生徒を指導できるからです。こういう習性はセンスを磨くことを阻害します。私は生徒の訴えを通じて「なぜ?」と考えることの大事さを改めて知った気がします。自分自身の固定観念を見直す機会を得られたと思います。

 我々教員は「なぜ?」を常に考える癖をつけねばなりませんが、生徒も納得のいかないことは徹底的に問う努力が必要だと思います。全てを是認はできませんが、フランスの高校生の行動力は買ってもいいと思います。言ってダメならすぐ諦めるのではなく、本当に望むなら、自分たちの力を結集して議論を尽くして現状を変えるパワーが欲しいと思います。残念ながらまだこの力を引き出しえていません。「自由闊達にして愉快なる学園」へ道半ばです。これからは知識や情報の収集はAIで代替できます。学校教育のコアは民主主義を学ぶことではないかと思います。当然、そのメリットもデメリットも含めて。

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