好文木(校長ブログ)
2021.04.10
押され気味のコロナとの戦い

 塩野七生さんの長編小説『ローマ人の物語』には、度々ディクタートル(独裁官)という制度が出てきます。共和制ローマの時代、行政は通常毎年選ばれる2人の執政官が担っていました。しかし、外敵の侵入や疫病の流行など国家非常事態においては、権力の分散は非効率であるため、1人に全権を預け対応しました。それがディクタートル(独裁官)でした。但し、長期にわたる権力の集中は独裁政治を生むため、その期間は通常6カ月と短期間でした。
 ここにきて新型コロナは変異種による感染が拡大し、大阪では一日の感染者が連日過去最高を更新している状況です。大阪府・兵庫県・宮城県には「まん延防止等重点措置」が適用され、東京都・京都府・沖縄県がこれに続きます。昨日、大阪府は「医療非常事態宣言」を発出しました。「緊急事態宣言」発出が必要ではないかとの意見もあります。しかし、営業時間の短縮と不要不急の外出自粛要請が柱の宣言に効果があるとは思えません。
 「コロナとの戦い」は、変幻自在な敵の攻撃に晒されているにもかかわらず、有効な攻撃手段は未だなく、防御陣地の建設も遅れ、負傷者の救助施設も足りない状態です。敵に遭遇しないようにひたすら隠れる戦法で、敵はどんどん侵攻してきており、完全に押され気味です。ローマ時代なら、間違いなくディクタートル(独裁官)の出番となり、全権を委任された指導者が大胆な戦略と戦術を考え実行に移し祖国防衛に立ち上がるところですが、21世紀の民主主義下の日本では、国と自治体、政府と専門家委員会、政治家と官僚が小田原評定を繰り返している状況です。これでは「非常事態」の意味が軽くなり、国民の間に、緩みとともに諦め感が漂い始めるのも無理からぬことと思います。
 ワクチン接種は始まったばかり、病床は直ぐに満杯になります。先進国の中では圧倒的に少ない感染者数にもかかわらず、医療崩壊の危機が叫ばれる日本の医療体制は、あまりにもお粗末です。病床数を増やす努力をするというのが医師会の役割だと思うのですが、非常事態を宣言するだけで、民間医療機関における病床確保は思うようには進んでいません。
 思い切った医療改革が必要でしょう。従来から無症状の若者が感染を広げていると言われてきました。そして今、変異型が10代以下の感染リスクを高めるといわれます。若者へのワクチン接種を急ぐべきではないでしょうか。再びの一斉休校は避けたいところです。

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