好文木(校長ブログ)
2021.05.12
治に居て乱を忘れず

 緊急事態宣言は予想通り3度目の正直とはならず、5月31日まで延長されました。感染者、重症者とも大きな改善は見られず高止まり状態です。大都市から地方都市への広がりも見られます。これではまたまた再延長の可能性も十分考えておかねばなりません。
 当初は杜撰なコロナ対応に批判が殺到したアメリカとイギリスでしたが、迅速なワクチン接種が功を奏してきました。米・英は行き過ぎた新自由主義の弊害で、経済格差が拡大し、国内での分断も進み、凋落の一途を辿っているように見えていましたが、危機突破力の強さは流石です。バイデン大統領が目標に掲げたワクチン接種は、期限を待たずに目標を達成しています。一方、日本は国民の自粛による「日本型モデル」が上手くいっていると思われていましたが、感染が拡大し、欧米に比べてはるかに少ない感染者数にもかかわらず、病床が逼迫し医療崩壊が叫ばれる状況になっています。非常事態の対応には米・英と日本の間には大きな差があるように感じます。
 日本では、財政改革の一環として医療費削減のため国公立病院の統廃合や薬害訴訟を慮ってのワクチン開発意欲の低下等により、パンデミック発生時に対応可能な医療体制と迅速なワクチン開発ができる体制の整備が疎かになっていたとの見方があります。病床逼迫に陥り医療崩壊の危機を招いた根本原因の究明と改革案策定が急がれます。
 「コロナに打ち勝った証として」開催すると言っていたオリンピックですが、打ち勝つどころか打ち負かされつつあり、危うくなってきました。「安全安心な開催を目指す」と言われて納得する国民は少数です。米・英の有力紙が東京オリンピックの中止を主張し出しました。国内でもSNSでの開催反対の署名活動も始まっています。アスリートからも慎重な対応を求める声が出だしました。だいぶ外堀が埋まってきたように思います。
 「1日100万回のワクチン接種を目標にする」、「先頭に立って加速化し実現する」など総理は発言されていますが、トップが大号令を発しても、誰が責任をもって具体的にそれを推進していくのか不明瞭です。ワクチン担当に河野大臣が任命されていますが、なかなか接種の予約ができない事案も頻発しています。ワクチンが量的に確保できているとしても、打つ場所、打ち手の確保など心もとない限りです。本心では政府もオリンピックに関しては「安全安心な開催」は難しいと思っているのではないでしょうか。
 戦後80年近く日本が平和でおられたということは有難いことであり、先人の知恵の賜物でもあったと思います。しかしその一方で、「治に居て乱を忘れず」の教訓が忘れ去られていたのかもしれません。今後も新たなウイルスによるパンデミックが起こる可能性はあります。緊急時に機動的に対応できる医療体制の再構築が急がれます。

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