今年上半期の出生数が33万人となり年間で70万人を割るのではないかとみられています。出生数は2010年の107万人から2023年には77万人へと28%も減少していますが、さらに拍車がかかっています。
大阪府教育委員会によれば、大阪府公立中学校卒業者数は昭和62年の147,907人をピークに減り続け、令和6年は66,878人とピーク時の44.4%になっています。今後の推計では令和14年に6万人を割る見通しです。
その一方で不登校児童生徒の数は増加しており、2023年度小中学生で過去最多の34万人と11年連続の増加となっています。当然、高校での不登校も増え、通信制のN高校、S高校など人気で生徒数は3万人に上っています。文科省は不登校特例校の設置を促進しています。また全日制高校におけるICTを使っての単位取得を一定の範囲で認めるようにもなりました。
文科省は、様々な理由で学校に行けなくても学びたいと思っている生徒の学びを保証する趣旨なのですが、「学校に行きたくなければ無理に行かなくてもよい」という論調が次第に強くなり市民権を得るようになりました。いじめの被害に遭ってまで学校に行かなければならないことはありません。しかし、多少の人間関係のもつれややる気のなさを理由に学校に行かない選択が正当化されるのはいかがなものかと思います。
学校教育の目的は自立貢献にあることは言を俟ちません。そのためには忍耐力も必要ですしコミュニケーション能力も大事です。それを養うのが、趣味趣向も育った環境も異なる子どもたちが限られた空間で過ごす学校です。多少の我慢を強いられ競争しながら共存していくのが学校のあるべき姿です。「行きたくないから行かない」が通れば、学校は何らかの手立てにより卒業できたとしても、そのあとの実社会では通用しないので、「それは本当に生徒のためになるのか」はなはだ疑問です。
人間というのは易きに流れやすいものです。「学校には行かないといけない」というのが歯止めになっていたと思いますが、それがなくなりました。仕事においても「やりたいこと」、「やれること」そして「やらねばならないこと」の3つがあるといわれてきましたが、いまは「やりたいこと」だけに拘って転職を繰り返し自分探しを続ける若者も多くなっています。
人口減少は社会の様々な分野に影響を与えますが、教育において新たな「甘えの構造」が出来上がると、社会は益々二極化に向かい活力を失うのではないかと懸念します。