好文木(校長ブログ)
2026.10.14
2050年の日本

 朝夕は気温が20度を割り涼しくなってきましたが、日中は27~28度とまだ夏模様が続いています。気温差で体調を壊している生徒も出てきています。最近はインフルエンザも夏から流行し、冬の乾燥期のみではなくなりました。

 道を歩いていると金木犀の良い香りが漂ってきます。秋を感じます。しかし、拙宅の金木犀は不調のようで、オレンジの花も少なく香りも微かです。古木なので酷暑で水不足が影響したのかもしれません。

 『なぜ日本は没落するか』(森嶋通夫著 岩波書店)は1999年3月5日に第1刷が発行されました。私が読んだのは2004年3月25日の第14刷発行分でした。今この本を書斎の本棚の奥から取り出し再度読み直しています。と言いますのは、当時、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス名誉教授、大阪大学名誉教授だった経済学者、森嶋氏はこの本の中で、2050年の日本は没落していると予想されており、50年までまだ24年を残す現在ですでにその兆候が顕著になってきたからです。

 森嶋氏は没落は政治からであるとし、没落した国民は発言力が弱くなり、今はG7のメンバーで一流国の仲間入りをしているが、もはやその重要メンバーではなくなっているだろうと予想しています。2050年の日本は、都会でも地方でもどこでも同じ教育を受け、階級差の少ない社会になっているものの、その資質はよくなく、エリートも牽引車も存在せず、経済的に恵まれているほど安逸を打ち破ろうとはしないだろうと考えています。

 マルクスは社会の土台を経済だと考えましたが、森嶋氏は人間が土台だと考えます。経済は人間という土台の上に建てられた上部構造に過ぎないと見ています。従って、その人間が、量的、質的にどう変化するかを予想すれば、上部構造の経済を推し量ることができると考えました。現在(1998年)3歳、13歳、18歳の人は52年後の2050年には、それぞれ55歳、65歳、70歳となり、官僚のトップ事務次官、各会社の社長、政界の重鎮になっていると見ます。当時の13歳や18歳が受けている教育を見れば2050年の社会の上層部の能力が推定できます。

 今2026年、1998年時点の3歳は31歳、13歳は41歳、18歳は46歳ですが、政界、実業界、官界、教育界等々それぞれの業界、職場で、論理的思考力があり問題解決能力に優れイノベイティブな人たちがたくさんいるでしょうか。ちなみに今問題になっている農林水産大臣は47歳です。森嶋氏は、田中角栄元首相は政治的イノベーション案を示しえた数少ない政治家であったが、そのマイナス部分がその後の利益誘導型の政治屋を生んできたと厳しい評価を下しています。

 森嶋氏は戦前の教育と戦後教育のミスマッチ、政・官・財の鉄の三角形の功罪、バブル崩壊と日本的経営の終焉、職業倫理の荒廃、大学進学率の上昇による大卒の希少価値の喪失とエリート主義の欠如、人口減少などから日本の没落を予想しています。

 そして、没落が始まると国民気質に変化が生じ、国民の自信を高めるために右傾化の動きが生じるだろうと予想し、そしてこういう動きは国際的に連動していることが多いと述べています。政治による雇用創造はゼロで、再軍備に手を付け2050年には軍産複合体を膨らませるかもしれないとも予測しています。

 森嶋通夫氏は私がこの本を読んだ直後の2004年7月13日に亡くなられましたが、今の日本と世界の状況を見ると、26年前の予測が現実のものとなりつつあると思います。森嶋氏はただ一つの救済策として「東北アジア共同体」案を提示していますが、中国や韓国に対する日本のかたくななスタンスから実現性が低く、没落は避けられないとの結論を導き出されていました。これまた現状を見るとまさにその通りで納得せざるを得ません。

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