週刊ダイヤモンド2018年2月10日号「個人も企業も生死を分けるAI格差」を読むと、AIがひたひたと社会に浸透してきていることが分かります。ゴールドマンサックスには2000年当時ニューヨーク本社の現物株式部門に600人のトレーダーが在籍していたそうですが、昨年はわずか2人にまで激減し、約200人のITエンジニアが運用するロボットトレーダーに入れ替わりました。
日本でも証券アナリスト業務のレポートの自動作成にAI導入が検討されており、AI化により同じレビューが作成されアウトプットが同じになるなら証券会社は1社で済むことになります。大手銀行も相次いでAI化を進め新規採用を抑える大規模なリストラ策を発表しています。
マッキンゼー・グローバル・インスティチュートは、自動化の進展で日本人の労働人口の半数近く2700万人が事実上失職すると予測しています。ホワイトカラーの7割を占める「情報収集」と「加工」の前工程は急速に自動化され、大卒ホワイトカラーのルーティーン業務は消滅し、より付加価値の高い「分析」・「予測」・「意思決定」という後工程で如何に創造的な成果を生み出せるかがホワイトカラーの価値を決めることになるとしています。自動化に対する抵抗力を有し高い生産性で高給をとれる仕事か、自動化に対する抵抗力を有するスキルをそれほど要しない大量雇用の低賃金の仕事かの二極化が進み所得格差が拡大すると予測しています。
AIを造りだし使う側の人間とAIに使われる側の人間ができるともいえます。しかし、1998年のロシア危機に際しては、二人のノーベル経済学賞受賞者が関与したヘッジファンドLTCMが破綻しました。それは、絶対間違わないシステムを作ったはずの金融工学が、人の心理の変化に敢え無く敗れ去った結果でありました。2008年には、サブプライムローンに端を発したリーマンショックが発生し、世界恐慌の淵に立たされました。最近では仮想通貨の流出が問題となっています。そこには一部の人しか理解できずブラックボックス化するシステムの怖さがあります。
本だけでなく衣料品もネット販売へと移行しつつあります。商品を手に取り、風合いや色調を確かめ、店員との会話を楽しみながら買い物をする機会が減ります。ケイタイでの会話が主流となり、ネットで生活を賄う社会では人々のコミュニケーション能力は益々低下するのではないかと危惧します。無機質な社会の出現を阻止する役割を学校教育の場において私たちが担わねばならないのだろうと思います。