好文木(校長ブログ)
2022.10.07
エモクラシーVSなぜ?

 英国の歴史家ニーアル・ファーガソン氏は、感情が理性に勝る状態を「デモクラシー」になぞらえて「エモクラシー」と名付けました。アメリカでトランプ政権が発足して以来、この「エモクラシー」ウイルスが世界に蔓延したように思います。「エモクラシー」の特徴は論理的思考の欠如と思い込みによる他者攻撃です。SNSやインターネットなどがその温床となっています。
 先日、観点別学習の評価に伴う授業改善の試みとして実施されたiPadを活用した1年生の社会科の授業を参観しました。4~5時間を使って、「女性が働きやすい職場にするには何が必要か」を班に分かれて意見を纏めプレゼンするというものでした。ここで感じたことは、生徒たちは一生懸命にiPadを使って関連の記事を探し、そこから企業内保育所の設置やパパ休暇取得やフレックスタイム制導入など様々な施策を導き出していましたが、「なぜ」という疑問を持ち深堀するまでには至っておらず、探究がまだまだ浅いということでした。
 たまたま見つけた記事から結論に結び付けており、多くの事実を積み上げ共通点を見出し結論に導くという帰納法的手法を採っている班はありませんでした。また、フレックスタイムやパパ休暇などの内容をどこまで理解しているか疑問でした。女性の就業率を示すグラフでは、スウェーデンなど北欧諸国が上位にあります。また、女性議員の割合ではルワンダが60%とトップになっていました。「ではなぜスウェーデン、あるいはルワンダなのか?」と疑問をもって調べるまでには至らず、そこはあっさり通過してしまっていました。机間巡視して私が「なぜスウェーデンは女性の就業率が高いんだろうね。日本はスウェーデンの真似はできないのかな?」と水を向けた班が少しスウェーデンについて調べていました。こういった授業は教師の導きも大事で、また生徒同士の積極的な質疑応答や議論ができる時間も重要です。参観後、感想を担当教員に伝えました。
 VUCAの時代と言われる現代、社会のいたるところで激しい対立が起きています。常に社会現象に対して「なぜそうなのか?」という疑問を抱き深堀することが、一呼吸置くことにもつながり、「エモクラシー」ウイルスを撃退する免疫を造ることになるのではないかと思います。高校時代にこの免疫力をしっかり付けられるようにしたいと思います。さらなる授業改善を期待します。

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