好文木(校長ブログ)
2019.05.31
小さな幸せを感じるとき

 真夏のような一時の暑さが和らぎ、本来の5月のさわやかな心地よい日々が戻ってきました。最寄り駅までの通勤途上では、白く独特の形をもった柏葉アジサイがたおやかに咲いており、梅雨の訪れの近さを感じます。
 帰宅途中、5年前の卒業生に出会いました。千船から阪神電車に乗って梅田に向かっていました。野田阪神駅に着き停車したので、手元の本から目を上げて何気なくふとプラットフォームを見た時、ある女性と目が合いました。電車に乗り込んでくる彼女と一瞬見つめ合っていましたが、彼女はにっこり笑って「先生、覚えていてくれたんですか?」と空いている私の隣のシートに座りました。
 彼女は私に気が付いたのですが、私が彼女のことを覚えているかどうか自信がなく、一方私は確か卒業生だと思ったものの万一間違えていたらと思い、お互いがそれを確認できるまで暫し見つめ合っていたというわけです。
 私は校長就任以来12年間、朝校門に立って生徒を迎えています。こちらから声をかけることもあれば、生徒から話しかけてくることもあります。また、生徒指導は率先してやっていますので、通常の校長さんよりは生徒を知る機会が多いと思います。しかし、申し訳ないのですが、卒業してしまうと顔は覚えていても名前が出てきません。
 「ごめん、顔は覚えているんだけど、名前はなんだっけ?」から会話をはじめました。近況を訊ねると、短大を卒業した後、病院で医療事務の仕事に就いているとのこと。当時の担任の先生のことや薄く眉毛を描いていて生徒指導の先生に注意されたことなど懐かしそうに語る彼女と梅田まで一緒でした。
 仕事は結構忙しいようで、なかなか週休2日はとれないようです。「高校のほうが良かった、楽しかったな。高校に戻りたいな」というので、「仕事と高校生活とを比べるのはそもそも間違っているよ」というと笑っていました。
 彼女は元気で明るい生徒で、校門で立っているといつも笑顔で挨拶をしてくれていました。23歳になり随分落ち着いたレディになっていましたが、気さくで親しみのある話し方は当時とちっとも変っていませんでした。
梅田で降りると、名残惜しそうだったので、「また学校に遊びにおいで。来るとき連絡くれたらいるようにするから」といって連絡先を交換しました。家に戻ると、「ほんまにびっくりした! でも先生も元気そうだったので、こっちまで元気出た!頑張ります(笑)」とメッセージが届いていました。
 時々、こういう卒業生との再会があります。そのあとは決まって少し幸せな気分になります。

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