好文木(校長ブログ)
2024.07.17
白黒思考からの脱却

 先日、書店で『「むなしさ」の味わい方』(岩波新書)を購入して読み始めましたところ、作者のきたやまおさむ(北山修)氏が「ザ・フォーク・クルセダーズ」の北山さんであることがわかり、更に興味を持って読み進みました。北山さんの本職は精神科医で現在は白鷗大学の学長を務めておられます。
 北山さんは京都府立医科大学の学生の時に「ザ・フォーク・クルセダーズ」を結成し、「戦争を知らない子供たち」、「あの素晴らしい愛をもう一度」などのヒット曲を世に出しました。「帰ってきたヨッパライ」は飲酒運転で事故を起こしあの世に行った男が、天国で酒と美女におぼれ、神様から追い出されて現世に戻るというコミカルな話で、「おらは死んじまっただー」で始まる歌は早回しの東北弁、間に入る神様のお叱りの言葉は大阪弁と実に面白く印象に残る歌でした。
 人に裏切られた時、自分の気持ちが相手に伝わらない時、夢がついえた時、人はむなしさを感じます。きたやまさんは、「私たちは白か黒かで割り切れないものに囲まれて生きており、その二面性を認識することが大事だ」と言います。そして、「この二面性や多様性を受け入れず、どっちつかずの中間領域に立ち止まることを避け、白か黒かを決めたがる白黒思考に固まってしまい動きが取れなくなると、焦りが募り自責の念に取りつかれ、「自分はいないほうがいいんだ」、「自分は生きている価値がない人間だ」との思いが強まり、人生から退出する道を選んでしまうことにもなりかねない」と警鐘を鳴らします。たとえため息をつきながらでもむなしさを味わうという余裕があれば、人生はもっと豊かになるだろうときたやまさんは考えています。
 学校はルールや決まりがたくさんあり、白黒思考に陥りやすいところです。規律を重んじねばならないところではそれも必要ですが、どうでもよいところまで白黒思考が出張ってきます。生徒同士のもめごとにも生徒自身の白黒思考が原因と考えられる場合があります。白黒思考の先生が白黒思考の生徒のもめごとを仲裁するとどうなるか。自由闊達にして愉快な学園を築くためには、この白黒思考からの脱却を図らねばなりません。きたやまさんの本を読んで益々その感を強くしました。

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