清涼な朝の空気の中、金木犀の香りに癒され、すがすがしい気分で出勤できたのもわずか数日で、季節は一気に冬に入りました。金木犀はすっかり散ってしまい、庭にはホトトギスが咲き始めています。
2021年度に全国の小中高校などで認知したいじめが過去最多の61万件超だったことが、文科省の調査で分かりました。SNSなどを通じる「ネットいじめ」も2万件を超えたそうです。また、コロナ禍の影響もあり不登校も急増し全国で24万人とこれまた過去最多となっています。
最近は政治家の舌禍事件もSNSを通じて起こります。そんなことを言ったりしたりしたら、相手を傷つけ社会的に問題となることなどわかりそうなものですが、やってしまうんですね。Twitter上でフリージャーナリストを中傷する多数のツイートに「いいね」を押した衆議院議員に侮辱行為だとして賠償金請求が認められる判決が出ました。クラスで同じことをやったら、いじめと認定されます。この方はLGBTを巡り「生産性がない」との発言でも物議をかもしてもいます。
新聞の広告を見ると、有名な週刊誌だけでなく、保守的な主張をしている雑誌にも反対者に対する辛辣な文言が並んでいます。いたるところで、人をこき下ろし誹謗中傷する文言が溢れ、対立を煽られている気分になります。
人によって主義主張がさまざまであることは当然であり、また好き嫌いがあることもやむをえません。しかし、その意見や感情をストレートに発信してしまっては人を傷つけたり、けんかになったりしてしまいます。反対の立場の人々を傷つけないように態度や言葉に気を配る理性と知恵こそが、獣と人間の違いであるはずです。しかし、子供たちに範を示すべき大人たちがこの体たらくでは、「いじめ」は減りそうにはありません。
「何千人、何万人もの人々、みなそれぞれに暮しもちがい、心も体も違う人々を、白と黒のたった二色で割り切ろうとしてはいけない。ましてや、天下を治める政治ならなおさらにそうなのだ。おのれの立場だけを、しゃにむに押し付けようとしても、そこには何の解決もうまれはせぬ」(『その男』池波正太郎著)まさに至言だと思います。