
少子化が加速度的に進んでいます。厚生労働省が発表した2024年度の人口動態統計によると、日本で生まれた日本人の子どもの数は前年比5.7%マイナスの68万6061人と70万人を切りました。これは統計のある1899年以降初めてのことだそうです。特に東京都では子育て世代が転出超過となり出生率は0.96となり、初めて1を割った2023年の0.99をさらに下回りました。人口がどんどん減っている一方で寿命は延び人生100年時代を迎え、将来の年金や社会保障費が心配されています。退職年齢も引き上げられ70歳になるのもそう先ではないでしょう。
このような状況の中、就活時期の早期化、大学入試の年内決定の増加など若者の進路決定がどんどん前倒しになっています。また大手塾の話によれば中学受験の低学年化も進み、従来小4からが主流だった通塾が小1~2が増加中とのこと。一方でまた小中高での不登校も増加中です。大卒の就職後3年以内の退職も約3割と高水準を維持したままです。
「狭い日本そんなに急いでどこへ行く」、これは1973年全国交通安全運動で総理大臣賞を受けた標語です。2025年の大阪・関西万博の現在は若者の車離れが進んでいますが、1970年の大阪万博後はマイカーブームにより交通事故が増加した時代でした。
今私は「少子化の人生100年時代、そんなに急いでどこへ行く」と言いたくなります。本来アメリカの転職支援の理論であったキャリアガイダンスが、日本ではキャリア教育として大学から高校へそして中学へとこれまたどんどん早期化しています。「やりたいこと」を決めるためには世の中に対する知識と理解が必要です。中学生や高校生のまだまだ社会に対する不十分な学習で将来のキャリアを設計できるものでしょうか。大学生になってようやくというのが私たちの時代の有り様でした。もちろん中には、小さい時からの夢に向かって進み実現する人もいます。それは素晴らしいことだと思います。しかし、多くの中学生や高校生は「何をすればいいのか」迷っているのが実情じゃないでしょうか。
仕事には「やりたいこと」と「やれること」そして「やるべきこと」の3種類がありそれ全てを包含して一つの仕事が完結するのですが、「やりたいこと」を見つけようということに主眼が置かれたキャリア教育の弊害が、少しでも気に入らないことがあるとすぐ辞めるという風潮を生んでいるのではないかと思います。人生100年、もう少し気長にキャリアを考えてもよさそうです。
クランボルツの『計画的偶発性の理論』というのがあります。巡ってきた偶然のチャンスを活かすことが、次なるキャリアへの道を開くというものです。私自身まさにこの理論通りの経緯を辿りました。大学時代の就活では総合商社を選びました。そしていずれ実家の事業を継ぐことになるんだろうとも思っていましたが、その途中で女子校の校長に転職することになろうとは夢にも思っていませんでした。
お仕着せのキャリア教育に乗っかって無理に「何か」に決めようとする必要はありません。大いに迷い悩み、勉強し、本を読み、友人と語らいながら様々な経験を積んでゆくことが将来の選択の幅を広げ人生を豊かにすると思います。