好文木(校長ブログ)
2020.08.20
コロナと情報リテラシー

 短い夏休みが終わり、2学期が始まっています。コロナ禍の中で、例年にない長梅雨がようやく終わったかと思えば、連日の猛暑。今週いっぱいは3時間の短縮授業を実施しています。
 大学や高校でのコロナ感染者も増加傾向で、クラスターが出ているところもありますが、幸いなことに今のところ本校では感染者は出ていません。しかし、どこで感染するかわからないだけに安心はできず、心配な日々が続きます。
 今回の新型コロナ感染症対策については、政府や各都道府県の対応につき連日のようにマスコミではバイアスがかかった論評が繰り返されていますが、ワクチンや治療薬がない中で、感染拡大防止と経済を回すこととのバランスをとるのは至難の業だと思います。
 強制力を持った営業停止と補償がセットでなければ効果がないという議論は以前からあり、私も同感です。少なくとも緊急事態宣言が解除されるまでは、国民は素直に国や自治体の要請に応えていましたが、規制が長期化するに従い、持ちこたえられない人や店舗も出てきており、要請を受け入れられない状況になりつつあるのではないかと思います。
 このような中で気になるのが感染者や感染グループに対する差別や誹謗中傷です。治療に奮闘している医療従事者に対する偏見にはあまりの自己中心主義に情けなくなります。
 作家で評論家の保阪正康氏は『近現代史からの警告』の中で、関東大震災時の新聞が生んだ「集団ヒステリー」について、危機的状況に置かれた密室の中にあるルーモアを投げ入れると、その空間の人間たちは異様さが極端に増幅され、とんでもない動きをしてしまうことがある例だとし、今回の新型コロナの対応においても、同様に不確かな情報に突き動かされて、マイノリティや感染者への誹謗中傷が存在すると述べています。
 現代はテレビ・新聞に加えてインターネットなどSNSを通じて膨大な量の情報が流されています。我々はそれら情報を取捨選択し正しい判断を下さねばなりません。いわゆる情報リテラシーが要求されるのです。それには読解力と考える力が必要です。ライフネット生命の創立者で現在、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明氏は『還暦からの底力』において、指導者には教養が必要であり、「教養=知識×考える力」だと述べておられますが、私は、教養は指導者のみならず情報化社会を生きるすべての人が身に付ける努力をすべきものだと思います。
 本校では来年「メディアクリエイターコース」を新設します。フォトグラファーやWebプログラミング、VRコンテンツなどに挑戦します。担当者は「好奇心」と「読解力」をキーワードにしています。インターネットを通じてクリエイティブな作品を作るためには、センスが必要ですが、センスの元になるのは「読み解く力」・「記述する力」・「聴きとる力」・「端的に話す力」であると考えています。誠に時宜を得た新コースに期待が高まります。

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