
私は読書も好きですが、テレビでドラマを見るのも好きです。このところ世間を騒がせているフジテレビですが、月9のドラマ『119エマージェンシーコール』はなかなか見ごたえがあります。横浜市消防局の協力を得て作られており、119通報に応答して救急車や消防車の出動を指令する消防指令課3係のメンバーの活躍と葛藤を描いたドラマです。
指令室でかかってくる電話から内容を把握し適切な指令を出す必要があるのですが、電話越しの声だけで相手の置かれた状況を察知することは非常に難しいものです。時には救急車や消防車が到着するまでの現場での応急処置を依頼することも必要となります。また自死を行おうとする人には寄り添って話を聞くことで落ち着かせ思いとどまらせることもあります。
若いメンバーの焦りや失敗に、佐藤浩市さん演じる伝説の指令管制員が「通報者の声をひたすら聴く、想像力を働かせてな」とアドバイスする場面がありました。これは正に我々教員にも大いに当てはまるところです。生徒や保護者の話に耳を傾け、その背景にある事情を想像することは問題解決に欠かせません。経験が浅い教員は問題解決を焦るばかりに、相手の話にとことん耳を傾けるという余裕がありません。そればかりか、教員が問題を複雑にしてしまうことにもなりかねません。傾聴と共感そして想像が大事です。これはAIにはできない人ならではの感性の領域です。
日曜9時のTBSドラマ『御上先生』もまた論理的思考と健全なる批判精神が失われつつあるSNS時代に一石を投じる社会派ドラマです。松坂桃李さん演じる官僚兼教師の御上先生がしばしば口にする「Personal is Political(個人的なことは政治的なこと)」は、個人的な経験と社会や社会構造との関連性を明らかにするもので、まさに探究です。
ドラマは社会の世相を反映しています。振り返るとその時代が見え興味深く感じます。