
最後の寒の戻りであってほしいと願う今週の寒さですが、弓道場の河津桜が満開です。
アメリカの大統領選で話題となったSNSの政治への影響が日本にも及んできました。昨年の東京都知事選挙、兵庫県知事選挙で脚光を浴びることとなったSNSによる選挙。政治が身近になった反面、妄信を生み民主主義に危機をもたらすのではないかとの懸念が高まっています。日経新聞の「デモクライシス」と題した特集から考えてみたいと思います。
注目度や関心の高さ自体が価値を持つ経済圏を「アテンションエコノミー」といいます。Xやユーチューブ、TikTokなどのプラットフォームは閲覧数と閲覧時間に応じて広告主に収益がもたらされます。従ってユーザーの好みそうなコンテンツばかりが提示されます。アテンション(注目)を得られるようなタイトルや内容は次第に過激になり断定的になります。内容の真偽が不明にもかかわらず、事実であるかの如く発信されます。受け手にとっては、情報が絞られる「フィルターバブル」現象や自分に近い意見ばかりに接する「エコーチェンバー」現象をもたらし、物事の見方や考え方に偏向を生じる弊害があります。
情報の発信者はこのネット戦略を上手く利用すると多数の支持を獲得することができます。特に短く分かりやすい言葉を繰り返す「ワンフレーズ・ポリティックス」は効果的です。「自民党をぶっ潰す」、「郵政民営化に反対する勢力はみな抵抗勢力だ」、「感動した!」など一世を風靡した小泉純一郎元首相のスピーチは、一刀両断型ですが、前向きで明るさが感じられました。橋下徹氏も似たようなところがあります。昨年の都知事選では石丸伸二氏のスピーチから「石丸構文」なる言葉が生まれました。質問に質問で返し、論点をずらして自分の論理に持ち込み攻撃的で相手を揶揄するパターンです。小泉氏・橋下氏は陽の攻撃型、石丸氏は陰。いずれもインパクトは強く、派手で白黒はっきりして小気味よく感じます。(世の中は白黒思考では片付かず、曖昧さの中に真実を見出すことも多いのですが)この対極にあるのが石破総理です。YesかNoか答える前の説明が長く、じっくり聴かないと真意が読み取れません。スピーチとしては地味で面白味に欠けます。
好きなアイドルやキャラクターを応援する「推し活」同様に政治家に対するファン化が進む半面、アンチ勢力からの誹謗中傷も激しさを増し、時には命の危険にさらされることも。SNSは真面目さよりも面白さ、受け狙いに陥りやすく、多種多様な意見に耳を傾け、物事を深く考えることから人々を遠ざけてしまいます。ここに民主主義の危機を感じます。