「戦」が今年の漢字に選ばれた2022年が暮れようとしています。2月24日ロシアによるウクライナ侵攻が開始され、今なお戦闘は続いています。戦争は一旦始まってしまうと、攻めるほうにも攻められるほうにも甚大な被害をもたらすこととなります。街は破壊され人命は失われます。時には戦争犯罪と言われる残虐行為も起こります。戦争は悲劇を生み、恨みを残すだけで全く非生産的です。2度の世界大戦を経験し、外交的努力の重要性が認識されていたはずにもかかわらず、プーチン大統領を誰も止められず、あるいは止めようとせず、国際紛争の解決手段として容易に武力行使を認めることとなり、国連の限界を露呈する結果となりました。戦後長らく続いたパクス・アメリカーナ(アメリカによる平和)は完全に終わり、混迷の時代に入りました。
現在、ウクライナはロシアからインフラ攻撃を受け、電気やガスが止まり、薪で暖をとらざるを得ない状況です。27年前の阪神淡路大震災で電気、ガス、水道が止まり、しばし寒さに震えていたことを思い出します。破壊されつくした街の様子は震災後の街に重なります。ウクライナの人々の苦衷は察するに余りあり、一日も早い平和と復興を祈らずにはおられません。
先日、NHKのクローズアップ現代で、映画「すずめの戸締り」の深海誠監督のインタビューを見ました。この映画は実際に起こった災いを再現しています。東日本大震災の被害者の中には、つらい過去を思い出すので観たくないという人もいるだろうと思い、製作すべきかどうか随分と悩んだそうです。しかし、災害を経験しなかった人にアニメーションを通して体験してもらい共感を呼び起こすことができるのではないかと思い製作に踏み切りました。そして、社会の中で「共感」が増えれば、それだけ社会が良くなっていくのではないかと思うとも述べていました。言葉を慎重に選びながら真摯にインタビューに答えてゆく新海監督の姿からは、他者に対する気遣いとともにクリエイターとしての強い使命感が伝わり、少なからぬ感動を覚えました。
「共感」とは他者の感情や経験を自分のものと捉え共有することであり、それにより他者理解が進みます。これはまた、自分の言動により他者がどう感じるかを想像することにもつながります。誰しも気持ちよく楽しく学校生活を送りたいと思っていますし、仕事をしたいと思っています。ならば、今一度自分の言動を見直し、他者を慮り、他者との協調が必要になるのではないでしょうか。「共感」が増え行動に結び付けば、学校生活も仕事もより良いものとなるでしょう。
明日から2週間の冬休みです。健康に留意し楽しいクリスマスとお正月を迎えて下さい。