今日2月24日でロシアがウクライナに侵攻を開始して4年になります。国連常任理事国でもあるロシアが隣国ウクライナに突然武力侵攻、戦争を仕掛けるという事態に唖然とするとともに、これは第二次大戦後の国連中心の国際政治体制の崩壊だと感じたものでした。
この3連休中に『イン・ザ・メガチャーチ』(朝井リョウ著 日本経済新聞出版)を読みました。「推し活」に見られるファンダム(ファンの集団)経済の実態を描いた作品で、登場人物の口を借りて、アイドルグループのプロモーションの実態が語られます。
アメリカで宗教右派が勢力を伸ばしており、一度の礼拝に2,000人以上集まる規模のメガチャーチでは、楽器の生演奏やダンスなども交えたライブ感覚の礼拝で仲間を集め居場所を提供し集金マシーンともなっています。これがチャーチマーケティングです。「推し活」のファンは教会の信徒と同じで、本の題名はここからとられたようです。
デビューシングルの売り上げを伸ばす方策の中では、ナチスドイツの空軍総司令官だったヘルマン・ベーリングの言葉が紹介されます。「戦争を起こすことは、それほど難しくない。国民に対し、我々は攻撃されかけているのだと危機感を煽り、平和主義者には愛国心が欠けていると非難すればいい」。これはまさにプーチン大統領がとった方法です。そして、「危機感は強烈な自衛意識を生み、人々はこれまでの判断基準を更新させる。視野狭窄状態の集団内では、情報は感情を伴って共有され、その感情は人間の語りで拡散されるうち、物語に化ける。それがまた自衛意識による連帯とそれに伴う視野狭窄の加速を促す」というくだりでは、先の参議院選における外国人排斥ムードの高まりや核保有論が語られる昨今の状況変化が頭に浮かびました。(この小説は2023年4月1日から2024年6月20日にわたり日経新聞夕刊に連載されたもの)
高度経済成長時代のように皆が一億総中流を目指し働けば豊かになれる時代ではなくなり、単線のキャリアパスも通用しなくなりました。人生の指針がない時代だと著者は考えています。広い視野を持つと、物を買ったり食べたりするとき、それはエコかどうかあるいは製造国は何処か等気を遣うことが多いのですが、視野を狭くし同じ趣味趣向の者が集まれば楽になります。「何もかもが揺らぎやすい今、確固たる信仰対象があり、それに対して自分を使い切っている姿そのものに希少価値が生まれる。こういうことを頑張っていて偉い、ではなく、よくわからないけどめちゃくちゃ本気で生きてて眩しい」そういう世界に生きているのが「推し活」のファンです。
「推し活」のファンと宗教の信者そしてSNS選挙の共通点を改めて考えさせられたこの作品は、虚実入り混じった情報化社会で、視野狭窄に陥る人々を操る「物語」に飲み込まれないようにとの警鐘の書と捉えることもできるのではないかと思います。







