好文木(校長ブログ)
2019.11.13
修学旅行

 今週、2年生は修学旅行に出かけています。西表島と石垣島の3泊4日が定着してほぼ10年になります。何より勝手知ったる場所ですから安心できます。最初私も同行し内容をチェックしましたが、その後は、副校長に団長をお願いし、私は学校を守っています。
 私が校長に就任した12年前は、デザイン美術コースはパリ、情報コミュニケーションコース(現ITライセンスコース)はオーストラリア、保育コースは東京など、コースごとで行き先が分かれていました。名前も研修旅行と呼んでおり、それぞれのコースに見合った内容で決めていました。しかし、それぞれの目的の妥当性や効果は検証できていませんでした。
 前任の校長先生からパリに同行された時の感想を伺いました。「ルーブル美術館での説明を興味を持って聴く生徒はおらず、すぐにおしゃべりするので周りに気を遣った。本当に勉強になっているのかわからない」とのことでした。私もルーブルは行ったことがありますが、確かにあの広大な美術館を順番に説明を聴きながら見学するにはかなりの忍耐力がいります。西欧絵画にはキリスト教の影響が大きく反映されているので、聖書を知らないと理解できないことが多くあります。ここが日本人にはつらいところです。そして、旅費を考えるとオフシーズンにせざるを得ず、「花の都パリ」に12月に行くというのはナンセンスな感じがしました。
 その後、原油サーチャージの高騰やサーズの流行、テロのリスクの高まりから、海外はやめ、全コース同じ国内旅行に変えました。最初は北海道にしたのですが、バスでの移動時間が長く、車中でお菓子を食べたり寝たりしてしまうため、ホテルでの食事を残し夜遅くまで起きてしまうなど不都合があり、現在の八重山方面に変更しました。
 そして、研修を目的とはせず、高校時代の思い出として純粋に楽しむ目的で、宿泊はリゾートホテルにし、シュノーケリングやシーサーつくり体験、マングローブカヤックなど好きなアクティビティを選べるようにしました。最初はあまり活動的でない生徒用にホテルでゆっくりコースも設けていました。修学旅行のしおりは毎年2年生の学年団で作成しています。今年のしおりを見ると、目的として「秘境西表島、石垣島の大自然を体感し、環境について考える。社会人としての行動・マナーを実践する」と記載がありますが、そう気負わずに「西表島、石垣島の大自然を体感し、マナーを守って思いっきり楽しむ」でよいと思います。
 ヨーロッパやアメリカなど数か国から選べる修学旅行を実施している学校もあるのですが、一番のネックは費用です。ヨーロッパやアメリカとなれば最低でも25万から30万円ぐらいはかかり、保護者の負担が増します。よほど特別な企画でもない限り、卒業後、進学したり就職したりしてから個人で行ったほうがコストパフォーマンスが良いと思います。
『学校の「当たり前」をやめた』の著者、千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長は、保護者の負担も大きく、教員にとっても事前に下見に行くなど準備に相応の時間のかかる行事である修学旅行は、学ぶ意味があるものにしないとならないと考えて、旅行会社とタイアップした企画型の取材旅行を実施されています。
 2泊3日の取材旅行では、グループに分かれて生徒たちがツアー企画を考案し、京都・奈良の目的地を回り、お店や町の人に聴き取り取材を行いパンフレット掲載用の写真を撮影し、穴場のスポットなども提案します。旅行から戻ると、旅行会社の担当者による出前授業を受けて、パンフレット作成の具体的な方法を学びます。グループ単位でパンフレットができると旅行会社の社員の前でプレゼンテーションを行います。
 工藤先生は遠足についても同様の見直しをかけておられます。明確な目的意識をもって行事は実施すべきだとの考えです。私は本校の修学旅行に関しては今のところ「楽しむ」コンセプトでいいのではないかと思っています。ただ校外学習(遠足)については、「クラスの絆を深める」や「○○を学ぶ」などと各々一見すると立派な目的が書かれているのですが、気の合う友達同士グループに分かれて観光したりお昼を食べたりするだけのものもあり、授業をやめてまで実施する必要性が感じられず、来年度は見直したいと思っています。

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