学校はクラス単位で授業が行われますが、一つのクラスの生徒間には大なり小なり学力差があり、授業レベルをどの層に合わせるべきかというのが悩みの種です。そこで、教科によっては習熟度別に授業を行う場合もあります。しかし、習熟度別は担当教員にとってはやりやすい授業となるものの、各レベルの生徒の学力を向上させることが出来るのかどうかという点では疑問符が付きます。出来ない子を出来るようにし、出来る子をさらに伸ばすことが大事なのですが、ともに殻を破るほどの成果がみられず、中途半端になりがちです。ここに一石を投じつつあるのが様々な電子教材です。
教育現場でのICT(情報通信技術)活用はEducationとTechnologyを掛け合わせて「EdTech(エドテック)」と呼ばれ、世界市場規模は11兆円を超えるまでに成長しているそうです。また、生徒の学習進捗度に合わせた内容で勉強を進め学習効果を上げようという「アダプティングラーニング」という考え方も注目を浴びつつあるそうです。
現在は、クラスでの一斉授業の補完としてこのような電子教材を使うのが主流だと思いますが、AIの進化により電子教材の内容が更に充実すれば、こちらを主として授業で使い、解らないところを教員に訊くという形態もあり得ると思います。例えば、数学の授業は、一斉にパソコンに向かい自分のレベルに合った問題から解いて行き徐々にレベルアップしてゆくのです。同じ50分の授業も個々人がレベルに応じた地点から学習に取り組むことが出来て満足度が高まります。これを進めれば学年を取り払って3年間で高校卒業に必要なレベルを目指すことも可能です。ITの進歩は学校教育の常識を大きく変えるかもしれません。
大学入試改革において採用される「JAPAN e- Portfolio」には生徒と教員双方から教科成績のみならず部活動など学習過程一般を詳細に記録することになっており、生徒個々人の能力や成長過程がより鮮明に把握できる形となります。
AI時代、多くの仕事がコンピューターに代替されます。教員の仕事も例外ではありません。教員には今以上に個々の生徒に対するメンター的役割が求められます。「教える」・「指導する」に加え「傾聴する」・「共感する」力が必要となると思います。また、益々不確実性が高まる将来の進路指導においては、生徒にアドバイスできるだけの幅広い知識と教養が必要となります。