好文木(校長ブログ)
2020.11.30
履修主義と修得主義

 コロナ禍を契機に、政府はデジタル庁を設け、文科省は学校におけるICT化を加速しています。本校も来年度入学生からiPadを使った授業を予定しています。特に小テストが易しすぎるとの意見が生徒から寄せられていることもあり、一斉に同じ問題を解くのではなく、生徒のレベルに応じた学習ができるようにしたいと考えています。できる生徒はどんどん先に進め、出来ない生徒はじっくり取り組むことが出来るようにと考えています。ICT教育が学力向上にどのように効果をもたらすのかは、今後の検証を待たねばなりません。
 大学でのリモート授業については、新聞雑誌で様々な論評がなされており、効率が良く便利だという評価がある一方、対面授業のほうが分かりやすいという声もあることは周知のとおりです。深い対話や質疑応答となると対面が勝るのではないでしょうか。
 初等・中等教育においても、自主学習用の工夫されたアプリが色々開発されていますが、アプリを利用できる環境を提供しても、実際に有効利用しているのは限られた一部の生徒というのが実態のようです。環境やツールを整えても、それを利用して勉強に励んでくれなければ、宝の持ち腐れとなります。そうならないためには、学校において勉強の意義をしっかりと伝えることが大事です。
 日本の教育は履修主義を採用しています。出席日数に不足がなければ、成績のいかんにかかわらず進級、卒業を認めるというのが履修主義です。一方、教育目標に照らして一定の成績を修めていることを条件に進級、卒業を認めるのが修得主義です。欧米では修得主義を採っている国が多く、小学校での落第もあります。最近、日本も大学では修得主義に移行しつつあります。
 義務教育における履修主義も見直す時期ではないかと思います。必要な学力が身につかぬまま小学校から中学校にエスカレーター式に上げてしまっています。そして、少子化が顕著ですから、そのまま高校、大学へと進みます。小学校から正課として英語教育やプログラミング教育が入ります。益々、理解できないまま進級する児童・生徒が増えるのではないでしょうか。勉強は積み重ねですから、出来ていなければ出来ているところまで戻ることが必要です。理解できていないのにできたこととみなして上げていくのは、本当に生徒のためになるとは思えません。後で苦労するのは生徒です。時間をかけても修得できる環境づくりが必要だと考えます。

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