日経新聞は15日の朝刊一面トップで、『教育岩盤シリーズ』の第一弾として、『漂流する入試①「偏差値時代 終幕の足音」』と題して、大学入試における推薦と総合型が過半になったことを伝えています。18歳人口の減少が大学入試にも大きな影響を与えています。
生徒を囲い込もうとする大学と指定校推薦や総合型入試で年内に進路を確定したい高校生との利害が一致しているようです。一方で、筆記試験なしで面接や小論文のみで合格を決めるため、大学が学力不足の学生を抱えることになるというデメリットも指摘されています。
十数年前、関西の私大何校かを訪問して指定校推薦につき話を聞いた時は、指定校はこれ以上増やす気がないという大学が多かったものです。その理由はやはり一般入試で入ってくる学生との学力差でした。経営側は学生確保の手段として指定校推薦枠を広げたいものの、教授からのクレームがあると言われた大学もありました。これは実際に本校の教員採用時の筆記試験の結果からも確認することが出来ます。しかし、あれからさらに少子化が進んでおり、大学側には、多少質が下がっても量を確保せねば経営が成り立たないという危機感が一層強まってきているのだと思います。
16日には『漂流する入試②「一貫校強く大器晩成不利」』と題して、今後は小さいころからの塾通いがさらに助長され、高校3年間からの逆転は難しくなると論じています。また多くの大学では偏差値が意味を失う一方で、最難関大への競争は激化し、二極化が進むとも論じています。トップ校はより難しくなり、いわゆる中堅校の偏差値が下がることが見込まれます。中高一貫校を徹底するため東京の有力私立中高は高校からの募集を停止し始めているそうです。この波は地方の公立にも襲寄せて、水戸第一高や土浦第一高のトップ級を含む10校が中高一貫に転換したそうです。
しかし、本校の特進コースは、「小さい時から塾や家庭教師を付けた受験体制で来ていなくても、高校3年間コツコツ勉強すれば国公立大学も夢じゃない」を掲げてチャレンジしてきました。その結果、毎年数人ではありますが国公立大学合格者を出し、近年では大阪大学にも2年連続で合格者を出しました。これはかなりコストパフォーマンスの良い受験だと言えるのではないでしょうか。
日本のエリート選抜は筆記中心で社会のデジタル化が進む21世紀のニーズに合わないとも言うのですが、欧米のような小学校から大学までの一貫した教育システムを構築しない限りそれは無理だと思います。英国のシステムについては2019.12.9の好文木「大学入試改革の大山鳴動して鼠一匹」に詳しく述べていますので、ご参照ください。文科省は「知識・技能」だけではなく「思考・判断・表現」そして「主体的に学習に取り組む態度」の3点から評価する観点別学習状況の評価を打ち出しましたが、抽象的な目的を掲げて、具体策は高校や中学に丸投げするスタンスです。また「大山鳴動、鼠一匹」になりそうに思います。