入試改革の一環として早稲田大学は2021年度入試から、政治経済学部で数学(数Ⅰ・数A)を必修とすると決めました。これは戦後初だそうで、他の私立大学の入試にも影響を与えそうです。
海外の大学では経済学部には数学が付きものなのですが、日本の私学では文系として扱われ数学が入試に課されないのが一般的でした。従って、数学が苦手でも経済学部に行けました。恥ずかしながら、私も数学が苦手だったので、早稲田を国語・英語・日本史の3教科で受験しました。
政治経済学部の経済学科入学後も計量経済学など数学を使う科目は外して経済史や経済思想中心の科目履修をしました。卒業後に就職した総合商社においても営業課の仕事で数学を使うことはなく、その後今まで幸いにも大過なく過ごしてきました。今考えると、大学で経済学を勉強したとはとても胸を張って言えるものではありません。経済については実社会に出てから必要に応じて勉強したというのが実態です。そうして内心ずうっと数学コンプレックスを持ち続けてきました。
以前、経済誌の特集で、大学受験で数学を選択した学生の方が将来賃金が高いという記事が載っていました。難関の国公立大学受験には文系、理系を問わず数学が必要です。旧帝大と一橋大学、東京工業大学などの出身者は一流企業に就職する率も高く、この結果も頷けます。
今思えば文系科目も理系科目もバランスよく勉強したほうが視野は広がり興味関心の分野も増えただろうと思います。私は読書好きなのですが、理系の本となるとどうしても敬遠してしまいます。しかし、AIの進化と人生100年時代を前に、知識の引出は多いに越したことはありません。
国語は全ての教科の基礎で物事を筋道立てて考えるために必要不可欠です。言葉の定義や文脈を学ぶことで論理トレーニングに繋がります。数学は言葉ではなく数字で表される論理から正解を導き出します。国語の論理には心情が入りますが、数学の論理には入りません。一方、データーや統計を解析するとなると数学的知識が必要になります。両方兼ね備えると論理的思考力が飛躍的に向上すると思います。
高度な数学を使う仕事は限られるでしょうが、数学を学ぶことから身に付く論理的思考力は仕事の種類に関係なく役に立つと思います。早稲田政経を目指す後輩に反面教師としてエールを送りたいと思います。