好文木(校長ブログ)
2025.12.04
流行語大賞に思う

 2025年の新語・流行語大賞が発表され、高市首相が就任会見で言われた「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が選ばれました。新首相のやる気みなぎる力強い言葉だったと思いますが、「新語」ではありませんし、ことさら世間で流行しているわけでもありません。新語・流行語大賞というよりは、インパクト大賞と言ったほうがふさわしいのではないかと思います。
 「働いて×5」の名言は私が商社マン時代にはやった「24時間働けますか」を彷彿させます。これは栄養ドリンク「リゲイン」のCMソング「勇気のしるし」の中で使われた歌詞です。「アタッシュケースに勇気のしるし、はるか世界で戦えますか」、「有給休暇に希望をのせてペキン、モスクワ、パリ、ニューヨーク」等、まさに商社マンの応援歌のような歌詞でした。高市首相の就任直後の弾丸外遊はまさにこれを地で行くものでした。
 「勇気のしるし」が流行ったころは1980年代のバブル絶頂期でした。日本経済敵なしの状況で、国民にも高揚した気分がありました。しかし、1990年に入りバブルが崩壊し長いデフレの失われた30年を経て「24時間働けますか」は死語となり、それに代わり「過労死」や「ブラック企業」が流行語となりました。そして「ワークライフバランス」へと変遷を遂げてきました。
 高市首相の支持率は極めて高く65%とも75%ともいわれています。特に「ワークライフバランス」を重視すると考えられる20代から30代の若い世代での支持率が高いというのは興味深いところです。この世代は生まれてこのかたずっとデフレ低成長時代を生きてきました。下り坂の日本の将来に希望が持てない若者も多いと思います。彼らが調整型の政治家より内外ともに白黒はっきりもの言う強い政治家を求めているのかもしれません。
 首相の「働いて×5」スピーチに関しては賛否両論があります。「24時間働けますか」の時代から「ワークライフバランス」重視の時代になっており、時代錯誤的な感覚を持つ人がいることは理解できます。ただ、国民に猛烈な働き方を強いるような意図があったとは思えません。国のトップとしては立派な覚悟表明だったとも言えます。しかしながら、ちょっと力み過ぎてインパクトが大きかったことは確かでしょう。

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