好文木(校長ブログ)
2018.04.11
海図なき大航海時代

IMG_0870 少子高齢化が言われて久しいのですが、『未来の年表』(河合雅司著 講談社現代新書)を読むと、その影響の大きさに改めて肝を冷やされます。為替や株価の予想とは異なり、人口の推移は途中から急に増やすことが出来ないだけにほぼ確実に予測できます。
戦後1949年の出生数269万6638人は2016年には97万6979人となり70年間で3分の1近くまで落ちています。この流れはさらに加速し、2115年には31万8000人にまで減少すると予測されています。2018年は18歳人口が大きく減り始め、75歳以上の人口が「65歳~74歳」人口を上回ります。2020年には女性の過半数が50歳以上となり、出産可能な女性数が大きく減りはじめます。2025年、東京都の人口が1398万人でピークを迎えます。2026年、高齢者の認知症患者数が約730万人と5人に1人の状態となります。2033年には空き家が2167万戸、3戸に1戸は人が住まない状態になります。2115年には日本の総人口は5055万5000人まで減少する見込みです。
人口が確実に減り高齢者が増えていく中で、高度成長期同様の経済成長路線をひた走ることは極めて難しくなってきたといわざるを得ません。その上、人工知能AIに代表されるコンピューターの能力アップは人の仕事の代替を推し進めることになります。私は1957年生まれですから、高度成長期から「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代を経験し、バブル崩壊を見た世代です。私たちが「上り坂」世代だとすれば、これからの子どもたちや若者は「下り坂」世代ということになります。従って、我々の経験則でアドバイスすることが必ずしも適切であるとは言えません。
『未来の年表』は生徒にも読んでほしいと思います。日本の近未来を想定しつつ自らのキャリア形成や生き方を考えてゆくことが必要です。人口減少とコンピューターの発達は格差拡大を助長し、一億総中流社会と言われた日本においても「新・階級社会」の到来を告げる論調もあります。各業界については護送船団方式で生き残れる時代は遥か彼方に過ぎ去りましたが、個人レベルでも益々創意工夫と独自性が問われる時代になったと痛感します。海図なき大航海時代がやってきたとでも言うべきでしょうか。

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