新入生の皆さん、入学おめでとうございます。保護者の皆様にもお慶び申し上げます。
みなさんはこれから始まる好文学園での新しい生活に期待と不安を抱いていることと思います。私も小学校から大学そして就職をして会社に入った時、それぞれの段階で不安を感じたものです。しかし、案ずるより産むがやすしというように、あれこれ心配するより実際に飛び込んでみれば上手くゆくものです。困ったときは何時でも校長室に来て下さい。相談に乗ります。
今話題の『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』を読むと、みなさんは100歳以上まで生きる確率が50%以上あるのだそうです。日本は先進国有数の長寿社会ですが、いよいよ人生100年時代がやってきたようです。健康で生きがいを持って長生きが出来れば幸せだと思います。
科学技術の進歩は目覚ましく、今や人工知能AIの話題に欠くことはありません。車の自動運転、物流倉庫の自動化、スーパーなどのレジの自動化から囲碁将棋での電脳戦等々。AIが東大に合格できるかどうかチャレンジしてきた数学者の新井紀子さんによれば、MARCHや関関同立の限られた学部は合格圏内に入ったそうですが、東大合格は無理だとのこと。AIは論理と統計と確立に基づいて、過去の膨大なデーターを取り込み組み合わせで正解を導き出しますが、意味を理解しているわけではありません。従って、人の感情や微妙なニュアンスの違いは認識できないので数学では高得点がとれても国語や英語ではそこまで届かないそうです。しかし、MARCHや関関同立の入試に合格できるレベルまで達しているとすれば、そのレベルの知識があれば可能な仕事はAIに取って代わられるということになります。実際、単純な仕事のみならずかなり専門的な仕事もAIに置き換えが進んでいます。将来、人が行う仕事はAIでは出来ない人力を使う単純労働か、コミュニケーション能力を要求され高度な判断を必要とする仕事かあるいは芸術のような創造的で独創的な仕事になるのではないかと考えられます。。
100歳まで寿命が延び、AIが行う仕事が増える社会で、健康で生きがいを持って生きて行くにはどうしたらよいのか?人生100年時代となれば、経済的にも益々夫婦ともに仕事を持って長く働くことが必要となるでしょう。勉強して知識やスキルを身に付けても、技術革新のスピードが速いので、折角身に付けたスキルも直ぐに陳腐化し、また新たなスキルを身に付けねばなりません。常に学ぶ姿勢が求められます。しかし、知識やスキルの吸収には限界があると思います。そこで、今まで身に付けた知識やスキルだけではなく判断力やコミュニケ―ション能力を活かす必要性が高まります 昨今はSNSでの会話が中心となり、言葉を選ばないコミュニケーション下手の人が多くなっています。そのため、トラブルが絶えず時に炎上といわれる状況に発展します。人間が開発した科学技術に人間が翻弄されているわけです。相手のおかれた状況や気持ちを推し量り自分の気持ちを正しく伝えることが大事なのですが、そのためには適切な言葉を知っていなければなりませんし,論理的思考力や想像力が必要です。新井さんによれば中学校の教科書を正しく読み取れる人は驚くほど少ないといいます
先ずは基礎学力、読解力をしっかりつけることです。その上で、考えながら読書をすることで論理的思考力を養い、実践における失敗や挫折を通してコミュニケーション能力を身に付けてゆくことが出来るのです。
近年すっかり見ることが少なくなりましたが、神社を囲む鎮守の森には大小さまざまな木々や下草が生息しています。それぞれ多少の我慢を強要され、そして競争しながら限られた空間で共存しています。育ちや環境も異なる生徒たちが集まって生活する学校もまた同じです。私は鎮守の森のような学校にしたいと考えています。
もし、知識やスキルを学ぶだけなら、映像授業やアプリで十分という時代です。好文学園に入学したからには、勉強やクラブ活動、学校行事を通じて知識やスキルだけでなくコミュニケーション能力を鍛え良好な人間関係を築ける人となって下さい。小さな失敗や挫折を沢山経験しそこから学んでください。挫折力を身に付けることが好文学園での最重要課題だと認識してください。それがみなさんがこれから迎える人生100年時代を生き抜く力となると信じます。 みなさんの健闘を祈り私の式辞といたします。