英国の総選挙で14年ぶりに労働党が政権を奪取し、スターマー内閣が発足することとなりました。選挙前の議席数は保守党が345、労働党が206。これが今回の選挙で保守党は121まで落ち込み、労働党は412と倍増です。ダイナミックな変動です。2020年のEUからの離脱による経済的ダメージの回復、気象変動対策の加速化等々課題は山積みのようで、保守党に対する国民の憤りの反映と言えます。
翻って我が国の状況を見ますと、経済格差拡大、少子化対策、政治資金問題等々これまた国民の不満と憤りは高まっているのですが、政権交代を担える党はなく、仕方なしに与党でという流れが続いているんじゃないでしょうか。英国の保守党と労働党、米国の共和党と民主党というような二大政党が政権交代を繰り返すダイナミズムが良きにつけ悪しきにつけ社会を変えていくのですが、日本はそれがないので変化のスピードが極めて遅いです。
安定した平和な時代には多少のガタガタはあっても、最大与党の長期政権で乗り切れてきましたが、米国の力が弱まり、ロシアと中国が台頭し再び東西冷戦の様相を帯びるなど世界情勢が不安定化してきた今、それではちょっと厳しいのではないかと思います。また、国民の政治に対する関心の度合いも違います。特に若者の間では欧米に比べると政治意識が低いです。これは「どうせ自分たちの意見は通らないし、最後はみんな上が決めるから」と、変わらないことへの諦観の表れではないかと思います。
昨年、校則の見直しを生徒会中心にやってみましたのもこういった諦めの意識を変えたいという思いがあったからです。不満を持っている生徒は私のところに直接言いに来るか、SNSで学校の悪口を書くかどちらかでした。私のところに来た場合は、しっかり話を聴いてことの是非を判断し、変えるものは変え、変えるべきでないものはその理由をきちんと説明してきましたが、これでは「校長先生に言ったら変わる」という直訴方式では民主主義を育てることにはなりません。今回3回のフォーラムを開催して校則を見直しましたが、これで終わりではなく、今後も校則だけではなく学校生活をより前向きにする取り組みについても生徒から意見が上がり話し合いが持てる環境づくりをしなければならないと考えています。地道なところから「やれば変わる」という自信を育てて行かないと、政治に対する無関心層はますます増え、不満のはけ口にSNSで無責任な発言を繰り返すような非生産的な社会となり、日本の未来は危ういと思います。今回の東京都知事選の非常識なポスターや稚拙な政見放送など表現の自由を曲解したナンセンスなパフォーマンスが横行する社会は情けないほどセンスの悪い社会だと思います。