コロナ禍において、感染者を誹謗中傷し、特定しようとする動きがみられました。本人に思慮不足のところがあったとはいえ、人格を否定し、つるし上げるような行為は許されるものではありません。本人や家族は夜も眠れぬぐらいのストレスを感じたことと思います。
リアリティショー「テラスハウス」出演の木村花さんのSNSによる誹謗中傷が原因と言われる自殺がマスコミで大きく取り上げられ、ようやく、SNS発信元の特定を容易にする法整備が必要ではないかとの議論が国会で始まりました。以前からSNSによる被害は多発しており、「遅きに失した」というのが私の感想です。
SNSの一番の問題点は、「匿名性」です。誹謗中傷される側は名前のみならず時には顔も晒されますが、誹謗中傷するほうは、どこの誰とはわからない全くの安全圏でどこ吹く風でいるわけですから、いくらSNSリテラシーを唱えても、誹謗中傷は止みません。
気に食わない相手の言動を非難するのに、言葉は選びません。時には冷静な意見を発する人も出てきますが、今度はその人にも非難が向かい、どんどん過激になってしまう傾向があります。そして、厄介なのは、事実確認のない伝聞推定の勝手な解釈で非難を始める場合です。お門違いも甚だしいのですが、それが拡散されると、事実関係の審議はそっちのけで、話が独り歩きを始め、誹謗中傷の嵐となります。こうなればもう弁明の機会が失われます。悪いイメージが出来上がってしまうのです。匿名性の恐ろしさは、いわれなき社会的制裁を加えてしまうこともあり得るということです。
SNSでの誹謗中傷で良く見受けられる特徴は、言葉の定義が曖昧で、文章が非論理的で感情的、そして相手の立場への無理解です。もし、自分の意見を述べたいのなら、言葉の定義を明確に、相手の立場に立って想像力を働かせて、冷静で論理的な文章を書けば、批判にはなっても、誹謗中傷とはなりません。また、批判を封じ込めるとすれば、言論の自由を失うことになりますが、誹謗中傷、名誉棄損は人権侵害の問題です。別に考えねばならないと思います。
今日のニュースでは、総務省は名誉棄損に当たるような書き込みがあった場合、SNS事業者が被害者に開示できる情報に電話番号を追加する方針だと伝えています。相手の特定が容易になり、訴訟などの法的手段を講じやすくなります。言葉の暴力に対する抑止力となることを期待します。