好文木(校長ブログ)
2024.06.13
ヒップホップ禁止に思う

 東京都千代田区立麹町中学校は工藤勇一前校長が定期テストや固定担任制、校則の廃止など自立を促す改革を次々と打ち出し話題になりました。しかし、新聞等の報道によれば、工藤先生の改革は生徒の中に、自主性を発揮して伸びてゆく生徒とそうでない生徒の二極化を招いたようです。その弊害を是正するために学校は方針転換し規制強化に戻りつつありました。そして今回、部活動等におけるヒップホップダンスの実質的禁止が決まり、それを不服とする生徒や保護者らが区の教育委員会へ抗議文書を提出するという事態に至っています。
 工藤先生の書かれた本は私も読ませていただきました。学校改革の考え方が極めて似ていることに意を強くするとともに、その実行力に敬意を表しておりました。昨年、本校でもソニーの前身である東京通信工業の設立趣意書の一文を拝借し、「自由闊達にして愉快なる学園の建設をしよう」と全校生徒に語り、手始めとして生徒会中心に校則の見直しを実施いたしました。校長が変わると改革にブレーキがかかり、元に戻るというのは残念です。
 常識は時代とともに変わるものです。表現も変わって然るべしといえるでしょう。最初はマイナーだったものがメジャーになるという例はいくつかあります。音楽ではジャズがそうでしょう。19世紀末から20世紀初頭アメリカ、ニューオリンズの黒人コミュニティで生まれ、1920年代に主要な音楽の仲間入りをしました。
 絵画ではモネやルノワールに代表される印象派は、古代ローマの美術を手本とする歴史画が高く評価され、アカデミズム全盛の19世紀後半にフランスで起こった芸術運動と捉えられています。印象派という名前はモネの『印象・日の出』に由来し、批評家による風刺新聞での酷評により付けられた名前です。
 いついかなる時代でも、新しい試みは権威から拒絶されるものですが、それを評価する人が現れ次第にメジャーとなっていきます。印象派もそれに続くゴッホやマチス、ルソー、ピカソなどキュビズムの作家たちも当初は評価されませんでした。アメリカの富豪やコレクターが評価したことにより現在の地位を築きました。
 今回、話題に上っているヒップホップダンスも1970年代ニューヨークのブロンクス発祥の黒人文化がルーツです。今ではすっかり市民権を得て、高校のダンス部では一般的になっています。それにあこがれて入学してくる中学生も多く、それを中学の部活で禁止するというのは、かなりアンシャンレジーム感があるなと思います。

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