2019.03.04
平成30年度卒業式式辞 ~「感性」を磨く~

 3年生の皆さん、卒業おめでとう。保護者の皆様にも心からお祝いを申し上げます。
 さて、みなさんは平成最後の卒業生となりました。平成は「内平らかに外成る」すなわち「国内外と天地ともに平和が達成される」という意味で、1989年1月8日にスタートしました。その年の11月、東西ドイツを隔てていたベルリンの壁が崩壊し米ソ冷戦が終結しました。そしてインターネットの普及によるグローバル化の時代が幕を開け、世界には明るい未来が約束されているかに見えました。
 しかし、国内ではバブル崩壊により長期デフレが進行するとともに阪神淡路大震災以降日本列島は地震の活動期に入り大地動乱の時代を迎えました。国外ではアメリカで2001年、9.11同時多発テロ事件が勃発し、アフガニスタン紛争やイラク戦争への戦端が開かれ、文明の衝突とテロの時代に入りました。世界はIT化の恩恵を受けて、便利で豊かな時代になりましたが、その一方で富の集中が起こり経済格差の拡大と二極化が進み、グローバル化のひずみが大きくなりました。
 そして現在、「GAFA」と呼ばれる米ネット大手、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムの4社を中心に世界的な規模で人材と金融資本の集中が進み、彼らが収集する顧客データをめぐり、プライバシー保護の法整備が喫緊の課題となっています。
 SNSは感情的発言を誘発し、いじめやヘイトスピーチの温床ともなります。米国では10代の59%が、ネット上でいじめや嫌がらせを受けた経験があるという調査結果もあります。少数意見を圧殺し世論を煽動しポピュリズムに道を開くリスクを孕んでいます。
 また、人工知能AIは、囲碁や将棋でプロの棋士を破るまでに進化し、自動車の自動運転も実験段階に入っています。2045年には人間の知性を超える技術特異点(シンギュラリティ)に達すると予測されています。
 AIの導入で、業務はさらに効率化され生産性は向上します。しかし、データや数値分析は結果のコモディティ化(汎用化)を招き、差別化が消滅します。また、情報のインプットを進めると、突然変異のような進化により構造が理解できなくなるブラックボックス化も起こります。AIに対する盲信には警戒が必要です。
 昨今は、即戦力にならない文学や哲学より実学を重視する傾向がありますが、私はそれは軽率に過ぎると考えます。すぐ役立つものは、すぐ使えなくもなります。また、人は常に合理的な判断を下せるものではありません。人には喜怒哀楽の感情があります。デジタル社会において、スキルも大事ではありますが、人間関係を円滑にして生活や仕事の質を向上させるためには、他者に対する思いやりや気配り、想像力と創造性それに美的センスなど人ならではの物事を感じる力、「感性」を磨くことこそが重要となります。
 感性は物事を深く考え深く見ることによって磨かれます。そのためには先ず、考えながら本を読むことを勧めます。「読書」は時代を超えて東西古今の多くの人びととの対話の機会を提供してくれます。その対話の過程で歴史に学ぶこともできれば、人情の機微に触れることもできます。論理的思考力を学ぶこともできますし、生きる上での自分なりの指針を見つけ出すこともできます。
 しかし、如何に読書に努めようとも実践が伴わなければそれは机上の空論に終わります。得た知識を日常生活や仕事において試してみることです。人生は見たり、聞いたり、試したりが大事です。経験を通して知識は初めて実戦的な知恵に変わります。
 シェイクスピアの喜劇『お気に召すまま』の中に「この世界はすべてが一つの舞台、人はみな男も女も役者にすぎない」というセリフがあります。私はこのセリフが気に入っており、特に苦しい時には、「私は今この舞台で与えられた役を演じ切るのだ」と自分に言い聞かせることにしています。
 生きるとは自分の物語を作ることにほかなりません。ならば、どの様な時も「自分で考え」、「自分で決定し」、「自分で実行する」ことが大事です。
 みなさんは若い。人生100年時代を迎え、これからいくつもの役を演じることとなるでしょう。主役でも脇役でもたとえ端役でも、その舞台に必要な役として、精一杯演じて自分サイズの未来を拓いていってください。
 そしてどうしようもなくつらい時にはいつでも校長室を訪ねに戻ってきてください。卒業生にとっても校長室はいつもオープンですから。
 最後に、みなさんの健康と幸せとそして益々の健闘を祈念して、私の式辞といたします。

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