好文木(校長ブログ)
2022.03.03
プーチンの戦争に思う


 『君主論』の著者で、イタリアル、ネッサンス期の政治思想家ニコロ・マキャヴェリは、「現実的な考え方をする人が間違うのは、相手も現実的に考えるだろうから馬鹿な真似はしないに違いないと思ったときである」と言っています。今回のプーチン大統領によるウクライナ侵攻と核兵器使用も辞さないが如き強硬姿勢に、このマキャヴェリの言葉を思い出しました。
昨日までの穏やかな日常が、戦車とミサイルにより、いとも簡単に破壊されてゆくウクライナの現状を目の当たりにするとき、背筋が寒くなります。昨今の国際政治の多極化と不安定さを考えると、遠いヨーロッパの出来事とは思えません。テレビのニュースで、家族とともに地下室に避難した幼い少女が、「これが戦争だってわかった。死にたくない。」と涙ながらに語っていたのが強く印象に残っています。
 「一人殺せば殺人者となり、百万人殺せば英雄となる」とは、チャップリンの映画『殺人狂時代』で、チャップリン演じる殺人犯が死刑判決を受けた時に叫ぶセリフです。歴史が勝者により造られることへの皮肉が込められています。今回はロシア国内においても戦争反対のデモが多発しており、侵攻する兵士も消極的との報道もあります。プーチンの信じる大義は必ずしもロシア国民の大義とは言えず、プーチンが勝者となり、英雄と呼ばれることはないだろうと思います。
 人間の歴史は戦争と疫病との闘いです。そして、科学技術の進歩により疫病は克服されてきましたが、戦争は止むことがありません。ここに人間の賢さと愚かさを共に見る思いが致します。歴史を学ぶとは出来事を覚えることではなく、人間を研究することです。「いつ、どこで、だれが、なぜ、なにを、どのように」5W1Hのうち、「なぜ」を考え自分なりの答を持つことが大事です。学校での歴史の授業に望むのは、このところです。
 プーチンの電撃的侵攻に対し、NATO、欧米諸国は押され気味に見えますが、NATO軍や米軍が行動を起こせば、第3次世界大戦になるリスクが高まるとの現実的で正常な判断が働いたものと思います。拡大する経済制裁が効果を発揮し、プーチンが撤退・退陣を余儀なくされ、ウクライナに独立と平和が戻ることを、そしてあの幼い少女に笑顔が戻ることを祈ります。

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