好文木(校長ブログ)
2022.03.10
岐路に立つ世界

 1995年から1996年にかけて放映されたNHKスペシャル「映像の世紀」は、耳に残る哀愁を込めた重厚なテーマ曲「パリは燃えているか」とともに印象に残る番組でした。今も度々BSで再放送されています。第一次世界大戦と第二次世界大戦を経験し、戦争の世紀と言える20世紀を、世界中から集めた貴重な映像で振り返っています。戦禍で瓦礫と化したヨーロッパの国々、悲嘆にくれる市民の姿から、「戦争を起こしてはいけない。」との気持ちを強くするとともに、平和を享受することが出来る有難みを感じたものです。
 しかし今、「映像の世紀」が再び現実のものとなって我々の前に現われています。独裁者プーチンとロシア軍のウクライナ侵略は、20世紀の悪夢を蘇らせつつあります。第二次大戦後、米ソ対立から、ソ連の崩壊によるアメリカ一強時代を経て、中国の台頭とアメリカの相対的衰退による世界の多極化の時代を迎えました。そしてロシアに再びスターリンが現れました。まさに、「歴史は繰り返す」と言わざるを得ません。
 軍事施設のみならず、一般住宅、幼稚園、学校、大学、病院など無差別攻撃の様子が毎日伝えられています。トラブルのもととなりがちなSNSが、今回はウクライナ状況をライブで配信し、世界にプーチンの非道を強く訴える役割を果たしています。日本も太平洋戦争末期には東京・大阪大空襲を始め一般市民への無差別攻撃を受けました。そして世界初の被爆国ともなりました。映像を見るたびに、「何とかならないのか」と切歯扼腕しているのは私だけではないでしょう。日本国憲法前文「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」が虚しく響きます。
 西側諸国は一致して経済制裁に出ていますが、即効性はなく直ちに侵攻と殺戮を止めることができていません。今は、NATO諸国もアメリカも自制が効いており直接の軍事介入は控えています。しかし、侵略が長期化し惨状がさらに拡大すれば、世界各国の国民の非難の声は積極的介入を求め始めるかもしれません。プーチンを止めることが出来るのか。世界は今、1962年のキューバ危機以来の歴史の岐路に立たされています。歴史を学び、歴史に学ぶときだと思います。

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