好文木(校長ブログ)
2020.02.29
令和元年度卒業式式辞

 3年生のみなさん、卒業おめでとうございます。保護者のみなさまにも心からお祝いを申し上げますとともに、三年間、本校教育にご理解とご協力を賜り厚く御礼を申し上げます。
たかが三年、されど三年、お互いに、喜びも悲しみも、満足も後悔も経験しながら過ごし、そこから学び取った集大成が今日みなさんが手にする卒業証書であり、卒業式は生徒・保護者・教職員にとって三年間を振り返り、未来に希望をつなぐ大切な行事だと思います。
しかしながら、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止を趣旨とした安倍総理ならびに文部科学省の要請を受け、出来るだけ簡素化した形での卒業式といたしましたこと、何卒ご理解のほどよろしくお願いを申し上げます。
さて、経済学者ジョン・メイナード・ケインズは1930年のエッセー『100年後の予言』のなかで、経済成長を成し遂げ生活水準が上がると、1日3時間も働けば生きていける時代が来るかもしれないと想像しました。そして、「生きるために働く必要がなくなった時、人は人生の目的を真剣に考えなければならなくなるだろう」と述べています。
それから90年後の2020年、科学技術の進歩により飛躍的な経済発展を遂げた世界は今、グローバル資本主義による格差の拡大が懸念され、益々不確実性が高まっています。
 ケインズの予言に反し、私たちは余暇と退屈の問題に頭を悩まされることはなくなりました。それどころか、人生100年時代を迎え、働く期間がどんどん延びています。
そして人工知能AIに仕事を奪われる心配をしなくてはいけなくなっているのです。
過去の膨大なデーターを処理し、瞬時に答を導き出すAIは、デジタル化され数値化された分野で人間にとってかわることが出来ます。しかし、不確実な状況に臨機応変に対応することはできません。私たち人間は、感性(センス)を磨くことで存在感を高め、AIに負けることなくAIとの共存を目指さねばなりません。
「センスとはなにか」、グッドデザイン・カンパニー代表の水野学氏は、「センスの良さ」とは数値化できない事象の良し悪しを判断し、最適化する能力と定義しています。そして、センスは知識の集積と研鑽によって誰でも手にできる能力だといいます。
就職するみなさんは4月から、そして進学するみなさんも数年後、実社会に身を投ずることとなります。学校では、主に答えのある問題を解く勉強をしてきましたが、実社会では答えの決まっていない問題を解決する必要性に迫られることが多くなります。科学的分析や論理的思考が基盤となることは言うまでもありませんが、状況に応じて解決策が異なる場合があります。特に営業やクレーム対応など対人関係となると、バランスの取れたセンスが求められます。
 「自己実現」できる仕事がしたいという人がいるのですが、仕事には三つの要素があります。「したいこと」、「できること」そして「すべきこと」です。すべきことをせず、したいことのみ追い求めている人が多いように思います。以前に比べると、転職が当たり前になってきましたが、石の上にも三年というように、ある程度の期間は一つの職場で試行錯誤しなければ、能力も適性もわかりません。人は仕事で磨かれるものだと思います。
 みなさんにとって、これからが本当の学びの人生の始まりです。
 みなさんの卒業を心からお祝いするとともに、今後のさらなる健闘を祈り、私の式辞といたします。

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