新年、あけましておめでとうございます。今年は、コロナの暗雲が深く垂れこめた年明けとなりました。先行きの目途が立たず悲嘆に暮れている人も多く、「めでたさも中くらい
なりおらが春」という小林一茶の句が浮かんできます。
今朝は、この冬2度目の寒波襲来で、布団から出るのが辛かったのではないでしょうか。しかし、「冬来たりなば春遠からじ」といいます。通勤途上の桜並木では枝のつぼみが固く膨らんできていました。
さて、教育大国と言われるスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンの『スマホ脳』(新潮新書)によれば、長い人類の歴史において、IT化が進んだのはごく最近のことで、人間の脳はデジタル社会に適応できていません。様々な研究結果を通して、スマホやSNSの使い過ぎが睡眠障害、うつ、記憶力や集中力、学力の低下を招いていることを明らかにしています。
例えば、英国では11~18歳の半数が夜中にもスマホをチェックしており、10人に1人は10回以上確認していると答えているそうです。そして7割近くが「学校の勉強に影響が出ているかもしれない」と答えています。また、男子より女子の方がSNSに費やす時間が多く、置いてきぼりにならないように、いつもオンラインでコミュニケーションがとれる状態でなければならないと考えています。こうなると、ひっきりなしに脳内物質ドーパミンが放出され眠れなくなります。みなさんの中にも、この調査結果に納得できる人が結構いるのではないでしょうか。一方で、スティーブ・ジョッブズやビル・ゲイツなどIT業界のトップは、自分の子どもたちにはスマホやiPadの使用を制限していたという事実も興味深いところです。
また、14000人に及ぶ大学生を調査した結果、SNSの普及に従い、他人の考えや気持ちを理解する共感力や感受性が劣化してきているといいます。昨年、SNSによる誹謗中傷が原因で、プロレスラーの木村花さんが自らの命を絶つという痛ましい事件が起こったことは、記憶に新しいところです。この事件をきっかけにSNSによる誹謗中傷が社会的関心を集め、後にIPアドレスから特定された男性が書類送検されています。
コロナ禍において、リモートワークやリモート授業にIT機器が活用されています。ビジネスにも教育にも個人のコミュニケーションツールとしても役立っています。しかし、年齢、時間、用途など十分に考慮し、抑制して使わなければ、メリットよりもデメリットの方が上回ります。「過ぎたるは及ばざるが如し」、「中庸」が大切です。スマホ依存症が世界的に問題となっている今、『スマホ脳』を読んで、スマホとの付き合い方を見直すのも良い機会ではないかと思います。
コロナ禍は衰えるどころか勢いを増しています。まだまだ我慢の日々が続きますが、健康に留意し、先を見据えて着実に歩んでいきましょう。